相続税のしくみ


一生のうちで誰もが一度は経験する〈相続〉。

ある方が亡くなられたことにより、亡くなられた方の財産が法律で定められた者に承継されることを〈相続〉といい、〈相続〉により、法律上それまで自分のものではなかった権利を取得することができると同時に、自分がつくったわけではない義務(借金)を負うことになります。
相続税の申告はある程度の財産がなければ経験することのない領域ですが、〈相続〉そのものは財産の多い少ないに関係なく発生するものです。このページでは相続税の申告以外の視点から、ライフイベント〈相続〉をQ&A形式で確認していこうと思います。
※このページにおいて、相続税法での取り扱いと異なる項目または他の税法と関連のある項目をで表示しております

【 相続について 】
Q1.相続とは
Q2.相続を考えるにあたり整理しておく用語はありますか
Q3.相続が発生したときのスケジュールはどうなりますか
Q4.遺産は誰がもらえますか
Q5.夫婦に子供がいないとき誰が相続人になりますか
Q6.『○順位に該当する相続人が誰もいないとき』とは
Q7.相続人になるはずだった者が既に死亡しているときはどうなりますか
Q8.相続人としての資格(相続権)はなくなりませんか
Q9.遺産はそれぞれの相続人がどれくらいもらえますか
Q10.相続資格が重複しているとき(二重身分)の相続分はどうなりますか
Q11.どこまでが相続財産になりますか
Q12.保険金や退職金は相続財産に含まれますか
Q13.相続財産は相続人が必ず承継しなければなりませんか
Q14.相続財産のうち借金の方が多い場合相続しないことはできますか
Q15.相続できる最低限の割合はどれくらいですか
Q16.相続人が誰もいないとき、遺産はどうなりますか
Q17.遺言書を作成した方が良いと思われるのはどのようなケースですか
Q18.自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の違いは何ですか
Q19.遺贈について知っておくべきことはありますか
Q20.寄与分と特別受益について
Q29.相続があった場合の遺産手続きはどのようなものがありますか
Q30.税金の申告手続きはどうなりますか

【 相続税のしくみ 】はこちら

Q1.相続とは

A.相続の基本項目をご確認下さい

□ 相続は、【人の死亡】によって開始します
□ 亡くなられた方を【被相続人】といいます
□ 相続は、【被相続人の住所】において開始します
□ 相続開始の効果として、【被相続人の財産に帰属した一切の権利義務(被相続人の一身に専属する権利を除く)は、相続人が自動的に承継する】ことになります
□ 被相続人の財産に帰属した一切の権利義務を【相続財産】または遺産といいます
□ 被相続人の財産・債務を引き継ぐ子などを【相続人】といいます

Q2.相続を考えるにあたり整理しておく用語はありますか

A.相続では、民法の用語を整理しておきましょう

●相続法
□ 相続に関する様々な規定は相続法という法律があるわけでなく、民法(おもに第5編相続)に規定されています
□ 相続税の申告については、相続税法に規定されています
□ 相続税法は民法がベースとなっているため、相続税法を理解するには民法(おもに第5編相続)の知識が欠かせないということになります
●死亡(相続の開始)
□ 人が死亡したとき、および失踪宣告により死亡したものとみなされたときに、相続が開始します
□ 人の死亡と同時に、当然かつ瞬間的に相続が開始します
●失踪宣告
□ 不在者の生死不明の状態が一定期間継続したときは、その者をある時点で死亡したものとみなすことによって、不安定な法律関係を確定させる制度をいいます
□ 失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があり、それぞれ要件と死亡したものとみなされる時期(死亡の効果が発生する時期)が異なります
□ 失踪宣告は、利害関係人から家庭裁判所に請求(申し立て)が必要です
□ 失踪宣告の審判が確定すると、ある特定の時期に死亡したものとみなされるため、相続が開始することになります
●普通失踪
□ 要件は、不在者の生死が7年間明らかでないとき
□ 7年間(失踪期間)満了の時に、死亡したものとみなされます
●特別失踪(または危難失踪といいます)
□ 要件は、戦争、船舶の沈没や震災など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、1年間生死が明らかでないとき
□ その危難が去った時に、死亡したものとみなされます(危難が去った後1年を経過した時ではありません)
●同時死亡の推定
□ 『数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する』とされています
□ 同時死亡者相互間では、相続は発生しません
□ ただし、同時死亡者の1人に代襲者がいた場合は、代襲相続が開始します(以前死亡には同時も含まれるため)
●親族
□ 6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を親族といいます
●血族
□ 血の繋がりのある者のことを血族といい、自然血族と法定血族に分かれます
□ 法律上の血縁関係にある親子・兄弟姉妹・おじ・おば・いとこなどを、自然血族といいます
□ 血縁関係のない者は、養子縁組により法律上の血縁関係が擬制されます(法定血族)
●直系血族と傍系血族
□ 直系血族は、お互いに上下に直線的(縦)に連絡する血族をいい、祖父母・父母・子・孫などの関係をいいます
□ 傍系血族は、共同の祖先であるものの直系から枝分かれした親系に属する血族をいい、兄弟姉妹・おじ・おば・いとこなどの関係をいいます
□ 直系と傍系は、自分との血の繋がりが縦に連絡しているか枝分かれしているかの区別です
●尊属と卑属
□ 自分の世代からみて先の世代(先祖)を尊属といい、このうち、祖父母・父母などを直系尊属といい、おじやおばなど父祖と同世代を傍系尊属といいます
□ 自分の世代からみてあとの世代(子孫)を卑属といい、このうち、子・孫などを直系卑属といい、甥・姪など子孫と同世代を傍系卑属といいます
□ 尊属と卑属は、自分の世代より先かあとかの区別です
□ 血族であっても、兄弟姉妹やいとこなど同世代の血族は尊属にも卑属にも該当しません
●姻族と配偶者
□ 姻族とは、配偶者の一方と①他方配偶者の血族および②自己の血族の配偶者との関係をいい、①自分(夫)と妻の血族の関係、または②自分(夫)と自分の血族の配偶者との関係をいいます
□ 兄弟姉妹の配偶者同士の間や、妻の兄弟姉妹と夫の兄弟姉妹の間には、姻族関係はありません
□ 姻族関係は、配偶者本人からみた区別です
□ 配偶者とは、夫からみた妻、妻からみた夫をいいます
□ 配偶者は、法律上の婚姻関係が必要(婚姻届が有効)であり、内縁関係にある者は含まれません
□ 配偶者は、血族にも姻族にも該当せず、親等もありません
●嫡出子と非嫡出子
□ 嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女間に生まれた子をいいます(婚内子)
□ 非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子をいいます(婚外子)
□ 嫡出子と非嫡出子は共に第1順位の相続人となりますが、相続分に差があります
※最高裁の違憲決定を受けた民法改正(平成25年9月5日)により、嫡出子と非嫡出子の区分は残しつつ、その相続分は同等(平等)とされました。この改正は、平成25年9月5日以後に開始する相続について適用されます。
●認知と準正
□ 認知により、子の出生のときに遡って法律上の父子関係(非嫡出父子関係)が生じます
□ 母子関係は、分娩の事実により当然に親子関係が生じます
□ 準正とは、父母の婚姻を原因として、非嫡出子に嫡出子の身分を付与する制度をいいます
●実子と養子
□ 養子縁組の日から、養子は養親の嫡出子たる身分を有することになります
□ 被相続人の養子縁組後にその養子に子が生まれた場合、その子は被相続人の直系卑属(孫)となります
□ 被相続人の養子縁組前にすでにその養子に子がいる場合、その子は養子の子ですが、被相続人の直系卑属(孫)ではありません
●全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹
□ 被相続人と父母の双方を同じくする兄弟姉妹を、被相続人からみて全血兄弟姉妹といいます
□ 被相続人とは父母のどちらか一方を同じくする兄弟姉妹を、被相続人からみて半血兄弟姉妹といいます
□ 全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹は共に第3順位の相続人となりますが、相続分に差があります

Q3.相続が発生したときのスケジュールはどうなりますか

A.スケジュール表で期限等をご確認下さい

※『相続手続きのスケジュール表』に具体的
な期限(日付)と個別スケジュールを書き込
むことができます

スケジュール表

Q4.遺産は誰がもらえますか

A.法定相続人が遺産をもらうことができます

【1】法定相続人
□ 相続人は、なれる者の範囲と順番が決められています
□ 相続人は、相続の開始時において生存していなければなりません。これを同時存在の原則といいます。
□ 相続人になれる者は、血族相続人と配偶者の2つに大別されます

【2】血族相続人
□ 血族相続人は、次の順位によりそれぞれの者が相続人となります。その順位に該当する相続人が誰もいないときに次順位に移ります。
□ 第1順位の相続人・・・被相続人の子およびその代襲者(再代襲者を含む)
□ 第2順位の相続人・・・被相続人の直系尊属
□ 第3順位の相続人・・・被相続人の兄弟姉妹およびその子

【3】配偶者
□ どの順位においても常に被相続人の相続人となります(血族相続人がなければ単独で、血族相続人がいれば共同で相続人となります)
□ 内縁関係にある者は、法律上の配偶者ではないため相続人となれません
□ 配偶者は、相続開始時(被相続人の死亡時)に配偶者(婚姻届が有効)であれば相続人となるため、その後再婚して姓が変わっても相続権を失いません

【4】血族相続人の判定にあたり留意すべき点
□ 相続開始時に胎児であった者については、既に生まれたものとみなされるため第1順位の相続人となります(同時存在の原則の例外)。ただし、死産の場合は相続人になれません。
□ 実子と養子に差はなく、第1順位の相続人となります
□ 嫡出子と非嫡出子に関係なく第1順位の相続人となります(相続分は差があります)
□ 実父母と養父母に差はなく、第2順位の相続人となります
□ 全血兄弟姉妹と半血兄弟姉妹に関係なく第3順位の相続人となります(相続分は差があります)

【5】法定相続人と相続人の違い
□ 言葉の使い分けとして、『法定相続人』とは前述の第1順位~第3順位の規定に従い本来相続人となるべき者をいい、『相続人』とは実際に相続人となった者をいいます
□ 相続の放棄があった場合を含め、相続税を計算するうえでは使い分けが必要です

【6】法廷相続人と相続人の違い

※『法定相続人と法定相続分(その1)』で
法定相続人の範囲が確認できます

法定相続人と法定相続分(その1)

【7】法定相続人の数
□ 相続税法では、①相続税の基礎控除額、②生命保険金の非課税限度額、③死亡退職金の非課税限度額、④相続税の総額を計算するときに、『法定相続人の数』という言葉を使います
□ 『法定相続人は何人か?』といった場合は、単純に上記【1】から【6】で判定された法定相続人の頭数を数えるのですが、相続税法では、これらの計算をするときに民法上の法定相続人の頭数をそのまま使わず、『法定相続人の数』としています
□ 相続税法では『法定相続人の数』を、『相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人』とし、かつ法定相続人のなかに養子がいる場合には、『法定相続人の数に算入する被相続人の養子の数を、1人または2人までに制限』しているため数え方が異なります

Q5.夫婦に子供がいないとき誰が相続人になりますか

A.第1順位以外の法定相続人についてご説明します

【1】被相続人の父母が健在
□ 第2順位の相続事案となり、被相続人の父母+配偶者が相続人となります
□ 父母の一方が既に亡くなっているときは健在の一方のみが相続人となり、父母の何れも亡くなっているときは祖父母、曽祖父母・・・が初めて相続人となります
□ 残された妻は、夫の遺産について夫の父母(第2順位の相続人)と話し合いをしなければなりません

【2】父母等の直系尊属がいない
□ 第3順位の相続事案となり、被相続人の兄弟姉妹+配偶者が相続人となります
□ 兄弟姉妹が既に亡くなっているときは、兄弟姉妹の子である甥・姪が相続人となります(代襲相続が発生)
□ 残された妻は、夫の遺産について夫の兄弟姉妹(第3順位の相続人)と話し合うことになります。もし、兄弟姉妹のうち誰かが既に亡くなっている場合は、その兄弟姉妹の子である甥・姪と、夫の遺産について話し合いをする必要があります。

【3】遺産分割協議を見据えた遺言書の作成
□ 夫婦に子供がなく(代襲者もなく)、夫が亡くなった場合の分割協議では、『争族』問題に発展することが考えられます
□ 残された妻は、いくら遺産分割のため必要だからといって、自分とは血の繋がりのない夫の父母や兄弟姉妹等(これまであまり喋ったことがない、またはあまり顔を見たことがない、何となく苦手・・・という相手もいることでしょう)と、夫の遺産について話し合いをしなければなりません
□ 必ず『争族』問題に発展するとは限りませんが、夫婦に子供がいないときは、夫は、残される妻のことを思い遺言書を作成することが有効でしょう

Q6.『○順位に該当する相続人が誰もいないとき』とは

A.遺産をもらえる順位は、以前死亡、相続欠格、相続人の廃除、相続の放棄があった場合に変わってきます


【1】第1順位に該当する相続人が誰もいないときは、第2順位へ

□ 最も優先して遺産をもらえる者は、被相続人の子およびその代襲者(再代襲者を含む)ですが、以下のときに『第1順位に該当する相続人が誰もいないとき』となります
□ 子(実子、養子、嫡出子、非嫡出子の区分は問わない)が1人もいない
□ 子は既に死亡しており、代襲者(孫など)が1人もいない
□ 子はいるが、その全員が相続欠格または廃除の事由に該当し、かつ代襲者が1人もいない
□ 子または代襲者はいるが、その全員が相続を放棄した

【2】第2順位に該当する相続人が誰もいないときは、第3順位へ
□ 2番目に遺産をもらえる者は被相続人の直系尊属ですが、以下のときに『第2順位に該当する相続人が誰もいないとき』となります
□ 父母(実父母、養父母の区分は問わない)、祖父母などの直系尊属が1人もいない
□ 直系尊属はいるが、その全員が相続欠格または廃除の事由に該当し、相続権を失っている
□ 直系尊属はいるが、その全員が相続を放棄した

【3】第3順位に該当する相続人が誰もいないときは、配偶者の単独相続
□ 3番目に遺産をもらえる者は被相続人の兄弟姉妹およびその子ですが、以下のときに『第3順位に該当する相続人が誰もいないとき』となります
□ 被相続人は、兄弟姉妹(全血兄弟姉妹、半血兄弟姉妹の区分は問わない)が1人もいない
□ 被相続人の兄弟姉妹は既に死亡しており、その代襲者(甥・姪)が1人もいない
□ 被相続人に兄弟姉妹はいるが、その全員が相続の欠格事由に該当し、かつ甥・姪が1人もいない
□ 兄弟姉妹または甥・姪はいるが、その全員が相続を放棄した
□ 第1順位から第3順位に該当する相続人が誰もいないときは、配偶者が単独で相続することになります
□ 第1順位から第3順位に該当する相続人が誰もいないときで、かつ被相続人に(法律上の)配偶者がいないときは、特別縁故者への分与を経て、『相続人が誰もいない場合=相続人の不存在』とされます

Q7.相続人になるはずだった者が既に死亡しているときはどうなりますか

A.その者の子が代わって相続することになります(代襲相続といいます)

【1】代襲相続
□ ある人の相続人になるはずだった者が、その相続の開始以前に既に死亡しているときは、その者の子が代わって同順位の相続人となります。『代わって相続する(相続人になる)』ことを代襲相続といいます。
□ 代襲相続が発生する相続事案を整理してみましょう。例えば、今回亡くなった被相続人をA、Aの法定相続人は子2人B・C、なおBはAの数年前に亡くなっており、Bには子1人Dがいるとします。この状況で、『Aの相続人になるはずだったBは、Aの相続の開始以前に既に死亡しているが、Bの相続分はどうなるか』という疑問がでてきますが、答えは『Bの子Dが、Bに代わってAの遺産を相続する』となります。
□ 本来相続人になるはずだった者Bを被代襲者、代わりに相続人となった者Dを代襲者(または代襲相続人)といいます。また、この様な相続事案については、『被相続人Aの相続については、相続人Bは以前死亡で、その子Dに代襲相続が発生している』というような表現をします。
□ 第1順位の相続事案で、相続人となるべき子が被相続人よりも先に死亡しているため孫が相続人になる場合や、第3順位の相続事案で、相続人となるべき兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡しているため被相続人の甥・姪が相続人になる場合が、代襲相続に該当します

【2】再代襲相続、再々代襲相続
□ 本来相続人となるべき者に代わって相続人となるはずだった者が、相続開始以前に死亡しているときは、さらに次世代の子が相続人となります
□ 上記【1】の例でいえば、Aの相続事案について、孫であるDもAの相続開始以前に死亡しているときは、Dの子(Aにとってはひ孫)がAの遺産を相続しますが、これを再代襲相続といいます
□ 再代襲相続は、第1順位においてのみ認められます。被相続人のひ孫や玄孫(・・・次世代の子)は再代襲できますが、第3順位における兄弟姉妹の孫(・・・次世代の子)は再代襲できません。

【3】被代襲者と代襲者の要件
□ 被代襲者になれる者は、①被相続人の子と、②被相続人の兄弟姉妹です。第1順位と第3順位の相続人が被代襲者に該当し、父母等第2順位の相続人は被代襲者になりません。そのため、代襲相続は第1順位と第3順位の相続事案についてのみ認められ、第2順位の相続事案については認められていません。
□ 代襲者になれる者は、①被代襲者の直系卑属であり、②被代襲者に対する関係でも相続権を失っていない者であり、③相続開始時に存在している者です
□ また、被相続人の孫が代襲者となる(=被相続人の子が被代襲者である)場合には、④被相続人の直系卑属であることも要件となります。例えば、養子縁組後に生まれた子は、被相続人の直系卑属なので代襲者となりますが、養子縁組前に生まれた子は、被代襲者の直系卑属(①)だけれども、被相続人の直系卑属(④)ではないので代襲者となりません。

【4】代襲原因は3つ
□ 代襲相続が発生する原因は以前死亡だけではありません。代襲相続が発生する原因として、前述の①以前死亡のほか、②相続欠格、③相続人の廃除の3つがあります。
□ 本来相続人となるべき者について、①から③の何れかに該当する原因があればその者は相続人になれませんので、その相続事案について代襲相続が発生することになります。(②と③については、【Q8.相続欠格または廃除の事由に該当する者は、相続権を失います】を確認して下さい)
□ 相続放棄は代襲原因となりませんので、相続を放棄した者の子が代襲相続をすることはできません

Q8.相続人としての資格(相続権)はなくなりませんか

A.相続欠格または廃除の事由に該当する者は、相続権を失います

【1】相続欠格
□ 本来相続人となるべき者に、一定の不正事由(欠格事由)があったときは、法律上当然に相続権がはく奪される制度を、相続欠格といいます
□ 相続欠格の対象者は、相続人となるべき者です
□ 相続関係者による特別な意思表示や裁判手続きを要せず、その相続人について欠格事由が認められれば、法律上当然に相続権を失います
□ 遺贈を受ける資格も失います(ただし生前贈与は可能です)
□ 相続欠格の取り消しについては、①制度の趣旨からみて当然に認められないという説と、②被相続人の意思表示(相続欠格の宥恕といいます)により認められるという説の2つの説があります。宥恕とは寛大な心で罪を許すことですが、この説が多いようです。

【2】欠格事由は5つ
□ 次の事由に該当する相続人は、相続欠格により相続権を失います
(1)故意に被相続人、先順位・同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた(確定判決を受けた)者
(2)被相続人の殺害されたことを知っていながら、これを告発せず、または告訴しなかった者(是非の弁別のない者や、殺害者が自己の配偶者・直系血族であったときを除く)
(3)詐欺・強迫により、被相続人が相続に関してする遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた者
(4)詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者
(5)相続に関してした被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
□ 上記(1)(2)は生命侵害行為に関する事由、(3)(4)(5)は遺言への干渉行為に関する事由となります
□ 欠格事由が、相続開始前に発生したときはその時点から、相続開始後に発生したときは相続開始時に遡って、相続権を失います
□ 相続欠格とされた者は、欠格事由に該当する特定の被相続人との関係で相続権を失うだけで、別の被相続人の相続人になることまで制限するものではありません。Aの相続事案で相続欠格とされても、Bの相続事案では問題なく相続が可能ということが考えられます。
□ 相続欠格とされた者の子は、代襲相続をすることができます

【3】相続人の廃除
□ 遺留分を有する推定相続人について、被相続人に対し一定の非行行為があったときは、被相続人の請求にもとづいて、家庭裁判所が調停または審判で相続権を奪う(はく奪する)制度を、相続人の廃除といいます
□ 相続人を廃除しようとするときは、被相続人の請求(遺産を相続させたくないという意思表示)が必要であり、かつ、その請求にもとづいて廃除調停の成立または廃除審判の確定が必要です
□ 廃除の対象者は、遺留分を有する推定相続人です
□ 被相続人の兄弟姉妹は遺留分を有しないので、廃除の対象となりません(兄弟姉妹に対しては、相続をさせない趣旨の遺言で廃除と同様の効果が達成できるため)
□ 遺贈を受ける(受遺者になる)ことは可能です
□ 廃除の取り消しは、被相続人の請求により認められます

【4】廃除事由は3つ
□ 次の事由に該当する推定相続人は、廃除により相続権を失います
(1)被相続人を虐待した
(2)被相続人に対して、重大な侮辱を与えた
(3)推定相続人としてその他の著しい非行があった
□ 廃除の請求手続きは、①被相続人が家庭裁判所に調停または審判を申し立てる生前廃除と、②被相続人が遺言で廃除の意思表示(→相続開始後に遺言執行者が申し立て)をする遺言廃除の2つの方法があります
□ ①生前廃除の場合は、廃除調停の成立または廃除審判の確定の時点から、②遺言廃除の場合(生前廃除の場合で、調停成立または審判確定以前に相続が開始した場合を含む)は、相続開始時に遡って、相続権を失います
□ 廃除された者は、廃除を請求した特定の被相続人との関係で相続権を失うだけで、別の被相続人の相続人になることまで制限するものではありません。Aの相続事案で廃除されても、Bの相続事案では問題なく相続が可能ということが考えられます。
□ 廃除された者の子は、代襲相続をすることができます

【5】代襲相続のまとめ
□ 以前死亡、相続欠格、相続人の廃除による代襲相続では、『その者』が相続人としての資格を失うだけで、『相続権そのもの』が消滅するわけではありません。相続権はその者に直系卑属がいれば引き継がれることになりますから、直系卑属はその者に『代わって相続する(相続人になる)』ことができます。
□ 被相続人の配偶者が相続欠格または廃除の事由に該当する場合、代襲相続は発生しないことになります。配偶者は、被代襲者の要件である『①被相続人の子と、②被相続人の兄弟姉妹』の何れにも該当しませんので、失った相続権を子が代襲することはありません。
□ 本来相続人となるべき者について、①以前死亡、②相続欠格、③相続人の廃除の何れかの事由に該当すれば、その者は相続人になれませんので、その相続事案について代襲相続が発生するのが原則となりますが、これらの事由のある相続事案の全てについて当然に代襲相続が発生するとは限りません。代襲相続が発生する場合としない場合、代襲者になれる者となれない者の区別が必要となります。

Q9.遺産はそれぞれの相続人がどれくらいもらえますか

A.遺産について相続人がもらえる割合を相続分といいます

【1】法定相続分
□ 法定相続分とは、遺産に対する相続人の権利の割合をいい、民法に定められた原則的な割合となります
□ 第1順位の相続分は、配偶者が1/2、子が1/2
□ 第1順位の相続人である子が複数いるときの各子の相続分は、1/2を子の人数で均等割りします
□ 第2順位の相続分は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3
□ 第2順位の相続人である直系尊属が複数いるときの各直系尊属の相続分は、1/3を直系尊属の人数で均等割りします
□ 第3順位の相続分は、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4
□ 第3順位の相続人である兄弟姉妹が複数いるときの各兄弟姉妹の相続分は、1/4を兄弟姉妹の人数で均等割りします
□ 第1順位~第3順位のそれぞれの場合で配偶者がいないとき(子のみ、直系尊属のみ、兄弟姉妹のみ)は、これらの者がそれぞれ全部
□ 相続人が配偶者のみのときは、配偶者が全部
□ 代襲相続が発生した場合の代襲者の相続分(代襲相続分といいます)は、被代襲者の相続分がそのままスライドしますので、被代襲者が相続したであろう相続分と同じ割合となります。なお、代襲者が複数いるときの各代襲者の相続分は、その相続したであろう相続分を、前述と同様均等割りすることになります。

【2】指定相続分
□ 被相続人は、遺言書を作成することで法定相続分とは異なった割合を指定することができますが、この指定された割合のことを指定相続分といいます
□ 指定相続分は、法定相続分に優先します
□ 指定相続分は法定相続分に優先しますが、常に拘束されるものではありませんので、相続人全員の同意があれば、遺言内容と違う割合で遺産分割をすることは可能です

【3】法定相続分を図で確認する
※『法定相続人と法定相続分(その2)』は
フローチャート形式で法定相続人の順番と
ケース別の法定相続分が確認できます

※このほか、非嫡出子の相続分、半血兄弟姉
妹の相続分、二重身分の相続分などの調整に
ついては以下のとおりとなります
スケジュール表

【4】非嫡出子の相続分は、嫡出子の半分
<改正前>
□ 第1順位の相続事案で、子のなかに嫡出子のほか非嫡出子がいる場合の非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の1/2となります
□ 例えば妻と子3人(うち嫡出子2人と非嫡出子1人)の計4人が相続人の場合、妻が1/2、嫡出子が各1/5、非嫡出子が1/10の相続分となり、子の相続分は頭数3人の均等割り(1/6ずつ)ではなくなります
<改正後>
□ 最高裁の違憲決定を受けた民法改正(平成25年9月5日)により、嫡出子と非嫡出子の区分は残しつつ、その相続分は同等(平等)とされました。この改正は、平成25年9月5日以後に開始する相続について適用されます。
□ 第1順位の相続事案で、子のなかに嫡出子のほか非嫡出子がいる場合でも、非嫡出子と嫡出子の相続分は平等となります
□ 例えば妻と子3人(うち嫡出子2人と非嫡出子1人)の計4人が相続人の場合、妻の相続分は1/2で、嫡出子と非嫡出子の相続分は、それぞれが子の相続分として頭数3人の均等割りである1/6ずつとなります

【5】半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の半分
□ 第3順位の相続事案で、兄弟姉妹のなかに全血兄弟姉妹のほか半血兄弟姉妹がいる場合の半血兄弟姉妹の相続分は、全血兄弟姉妹の相続分の1/2となります
□ 例えば妻と兄弟姉妹4人(うち全血兄弟姉妹3人と半血兄弟姉妹1人)の計5人が相続人の場合、妻が3/4、全血兄弟姉妹が各1/14、半血兄弟姉妹が1/28の相続分となり、兄弟姉妹の相続分は頭数4人の均等割り(1/16ずつ)ではなくなります

Q10.相続資格が重複しているとき(二重身分)の相続分はどうなりますか

A.相続資格が重複する事例とその場合の相続分を確認してみましょう

【1】相続資格が重複する場合(二重身分)とは
□ 1人の相続人に相続資格が複数帰属する状況を、相続資格の重複(=二重身分)といい、養子縁組や婚姻など以下のケースで、相続人と被相続人との間に二重の異なる親族関係が成立することが考えられます
(1)孫を養子にした・・・【2】子と代襲相続人の資格が重複する場合
(2)実子と養子が結婚した・・・【3】配偶者と兄弟姉妹の資格が重複する場合
(3)兄が弟を養子にした・・・【4】異順位資格が重複する場合
□ 相続資格が重複している場合、相続分を重複して認めるか、1つの身分のみの相続分とするか、その相続事案によって分かれます

【2】子と代襲相続人の資格が重複する場合
□ 被相続人をA、Aの法定相続人は子2人B・C、なおBはAの数年前に亡くなっており、Bには子1人D(Aの孫)がいるがAはDを養子としている、という相続事案を考えてみます
□ この状況で、『Dは、子(養子)としての相続資格と、Bの代襲者としての相続資格が重複しているが、それぞれの相続分はいくらか』という疑問がでてきます
□ このケースは第1順位の相続事案であり、同順位において資格が重複している状況となります。同順位資格が重複する場合は相続分の加算を認めているため、この事案におけるDの相続分は、子(養子)としての1/3および代襲者としての1/3を合算した2/3となります(残り1/3はC)

【3】配偶者と兄弟姉妹の資格が重複する場合
□ 父Eには子2人F・Gがおり、Gは配偶者Hと結婚したがHはEの養子となった、その後父Eが死亡し、今回Gも死亡した、という相続事案を考えてみます(被相続人は父Eではなく、Gという相続事案です)
□ この状況で、『Hは、Gの配偶者としての相続資格と、Gの兄弟姉妹(Eと養子縁組をしているため)としての相続資格が重複しているが、それぞれの相続分はいくらか』という疑問がでてきます
□ このケースは第3順位の相続事案であり、配偶者と血族相続人の資格が重複している状況となりますが、Hは配偶者の相続分しか認められません

【4】異順位資格が重複する場合
□ Iは、子供のいない兄夫婦の養子となっている、今回養父である兄が亡くなった、という相続事案を考えてみます
□ この状況で、『弟であるIは、子(養子)としての身分と、弟としての身分があるが、それぞれの相続分はいくらか』という疑問がでてきます
□ このケースは第1順位の子としての相続資格が認められることで、第1順位の相続事案となり、第3順位の兄弟姉妹としての相続資格はありません。結局、相続資格の重複の問題は生じないことになります。

Q11.どこまでが相続財産になりますか

A.相続財産の範囲をご確認下さい

【1】相続財産
□ 相続開始の効果として、『被相続人の財産に帰属した一切の権利義務(被相続人の一身に専属する権利を除く)は、相続人が自動的に承継する』とあり、被相続人が有している財産上の権利義務の全てを相続財産としています
□ 権利とは積極財産(資産)をいい、義務とは消極財産(負債)をいい、権利と義務に関わらず、全ての財産を総称して相続財産(または遺産)としています。また、資産をプラスの財産、負債をマイナスの財産とも表現します。
□ 積極財産(資産)の例示
(1)土地・・・田、畑、宅地、山林など
(2)土地の上に存する権利・・・借地権、地上権、定期借地権など
(3)家屋・・・居宅、貸家、構築物など
(4)有価証券・・・株式、国債、社債など
(5)現金、預貯金等
(6)知的財産権・・・特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権など
(7)事業用財産・・・売掛金、受取手形、たな卸資産、機械、器具、農業用資産など
(8)その他・・・車、家財、骨董品、貴金属、電話加入権、ゴルフ会員権、貸付金など
□ 消極財産(負債)の例示
(1)借入金
(2)公租公課・・・未納の所得税、住民税、固定資産税など
(3)保証債務・・・本来の債務者でなくとも、被相続人が借金の保証人となっていた、賃貸借契約の保証人となっていたなど
(4)その他・・・クレジットカードの未払金、未払いの医療費、預かり敷金、資産購入代金の残金、買掛金、支払手形、未払費用など

【2】相続財産に含まれないもの
□ ある方が亡くなったことにより取得する財産のうち、相続財産に含まれないものは、取得した者の固有の財産であるため遺産分割の対象となりません
□ 相続財産に含まれないものの例示
(1)財産分与請求権、生活保護受給権、身元保証債務、扶養請求権、国家資格など
(2)死亡保険金、死亡退職金
(3)未支給年金、遺族年金
(4)香典、弔慰金
(5)墓地、位牌、仏壇、仏具、神具などの祭祀財産

【3】相続財産の評価
□ 相続財産の評価額は、一般的には相続開始時の時価となります。取引相場、不動産鑑定士の鑑定評価、相続税評価額など、時価に相当する価額が考えられます
□ 相続税を計算する際は、財産評価基本通達による相続税評価額を時価として相続財産を評価します

【4】遺産分割との関係
□ 『相続財産の範囲』と『遺産分割の対象となる財産』は一致しません。預貯金などの可分債権や金銭債務は、原則として遺産分割の対象となりません。
□ 債務は遺産分割の対象になりませんので、相続人は、被相続人の債務を法定相続分の割合で承継することになります。遺産分割協議において、特定の者が債務を相続するという内容で相続人間の合意をすることは自由ですが、その協議内容をもって債権者(銀行など)に対抗することはできません。債権者の承諾を得ている以外は、他の相続人も同様に債務の支払いを請求されてしまいます。

【5】相続税法上の相続財産は範囲が異なる
□ 民法上では、積極財産(資産)と消極財産(負債)を総称して相続財産と表現しました。相続税法では、相続税の担税力と課税の公平を考慮して相続財産の範囲が定められているため、相続税のかかる財産、相続税のかからない財産(非課税財産)、相続財産から控除できる債務・葬式費用に大別され、民法と相続税法では、相続財産の範囲が異なります。
(1)相続税のかかる財産は、相続または遺贈により取得した財産で相続税の課税対象となるものをいいます。範囲は積極財産(資産)と同じと考えて下さい。ただし、死亡保険金・死亡退職金などのみなし相続財産や相続時精算課税適用財産、相続開始前3年以内の贈与財産も、相続税を計算するうえでは相続財産に含まれます
(2)相続税のかからない財産(非課税財産)は、相続税の担税力を考慮し範囲や金額が限定されています。一方、相続財産に含まれないものは、遺産分割の対象とならないものをいい、その範囲が異なります。
(3)相続財産から控除できる債務は、消極財産(負債)とほぼ同じですが、負債のなかでも相続税を計算する際に相続財産から控除できない債務があります。また、葬式費用の負担については、法律上定められた条文はありませんので必ず相続財産になるとは限りませんが、相続税を計算する際に一定のものは控除できることになります。
□ また、遺産分割との関係でみても『相続税のかかる(相続税の課税対象)財産』が必ず『遺産分割の対象』になるとは限りません

Q12.保険金や退職金は相続財産に含まれますか

A.相続財産には、原則含まれません

【1】受取人の固有財産と考えるのが原則
□ 被相続人(被保険者)の死亡を原因として支払われる保険金については、相続人の地位にもとづいて取得するものではなく、保険契約にもとづいて取得するものであるため、相続財産に含まれないとするのが原則となります
□ 死亡退職金については、その退職金支給の趣旨により特定の者に帰属させる性質のものであり、相続財産に含まれないとするのが原則となります

【2】保険金(生命保険金請求権)
□ 上記【1】の原則をふまえて、死亡保険金については、保険受取人が契約上誰になっているかによって、相続財産に含まれる場合と含まれない場合に区別されます。次の(1)~(4)の受取人のケース別に、相続財産に含まれるか否かを確認して下さい。
(1)特定の者を受取人に指定した契約・・・受取人の固有財産
(2)受取人を単に『相続人』としている契約・・・受取人の固有財産
(3)受取人が指定されていない契約・・・保険約款にもとづき、上記(2)と同様
(4)受取人が本人(被相続人)となっている契約・・・相続財産に含まれる
□ 上記(1)~(4)の受取人別の判定は、保険金の受取人が、相続人か相続人以外かを問いません
□ 死亡保険金が受取人の固有財産とされる場合は、相続財産に属さないため遺産分割の対象になりませんが、相続財産に含まれる場合は遺産分割の対象になります
□ 受取人の固有財産とされる保険金については、受取人が相続を放棄したときでも受け取ることができることになります

【3】退職金(退職金請求権)
□ 上記【1】の原則をふまえて、死亡退職金については、支給規定の有無に応じ次のとおりとなります
(1)法律、条例、内規などの死亡退職金に関する支給規定が存在し、受給権者が特定されている場合には、その規定によって受給権者が固有に取得する権利と解釈されるため、相続財産には含まれません
(2)受給権者が規定されていない場合については、確立された裁判例も存在しないため、支給の内容を個別に勘案して相続財産に含まれるか否かを検討することになります
□ 生前の退職後に死亡した場合は、被相続人が取得した退職金請求権を相続人が相続する流れになりますので、相続財産に含まれることになります
□ 受取人の固有財産とされる退職金については、相続を放棄したときでも受け取ることができることになります

【4】相続税法上の取り扱い
□ 保険金または退職金が、受取人の固有財産とされ相続財産に含まれない場合でも、次の金額は、相続税法ではみなし相続財産として、相続税の課税対象となります
(1)被相続人の死亡により取得した生命保険金のうち、被相続人が保険料を負担した部分に対応する金額
(2)被相続人の死亡により取得した退職手当金等で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの
□ 相続税の課税対象とされたもののうち、『500万円×法定相続人の数』に対応する金額は、一定の要件のもと、相続税の非課税財産とする取り扱いがあります

Q13.相続財産は相続人が必ず承継しなければなりませんか

A.相続財産を承継するか否かについては、3つの選択肢があります
【1】相続の承認
□ 相続人が被相続人の権利義務(資産と負債)の承継を受諾することを、相続の承認といい、単純承認と限定承認の2つに分かれます。一方、拒否することを相続の放棄といいます。
□ 相続の開始により、被相続人の財産に帰属した一切の権利義務は、相続人が自動的に承継するという原則的な効果がありますが、それと同時に、相続人には、その権利義務の承継を受諾するか否かについて、次の3つのうちのいずれかを選択する自由が認められています
(1)被相続人の権利義務(資産と負債)を無限に引き継ぐ、単純承認
(2)相続によって得た財産の限度で被相続人の債務等の負担を引き継ぐ、限定承認
(3)被相続人の権利義務(資産と負債)を引き継ぐことを否認し、相続人となることを拒否する、相続の放棄
□ 単純承認、限定承認、相続の放棄については、それぞれ効果や手続きの方法が異なります。相続が発生したときは、相続人が相続財産(資産と債務)の全てを必ず承継しなければならないというわけではありませんので、それぞれの相続事案に応じ選択することが重要です。

【2】熟慮期間
□ 単純承認または限定承認をするか、相続の放棄を選択するかについて考える期間を熟慮期間といい、この期間は通常3ヶ月となります
□ 熟慮期間の起算点は、被相続人が死亡した日とは限りません。①相続が開始(死亡)したことを知った+②自分が相続人となったことを覚知した時=『相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時』とされ、この時から3ヶ月を熟慮期間としています。
□ 『自己のために・・・』となっていることから、相続人それぞれの熟慮期間の起算点は異なることになります。また、以下の時を起算点とする例外もありますので、まずは熟慮期間の起算点をはっきりさせたうえ、相続の承認または放棄を選択する必要があります。
(1)被相続人に相続財産が全くないと信じたことに相当の理由がある場合・・・相続人が、相続財産の全部または一部を認識した時または通常認識することができた時
(2)相続人が熟慮期間内に、相続の承認または放棄をしないで死亡した場合(=再転相続の場合)・・・その死亡した者の相続人が①と②を知った時
(3)相続人が未成年者または成年被後見人の場合・・・その法定代理人が、その者のために相続の開始があったことを知った時
□ 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月の熟慮期間内に、限定承認または相続の放棄をしなかった相続人は、単純承認をしたものとみなされます
□ 自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続財産の状況を調査しても、なお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、相続人は、この3ヶ月の熟慮期間を伸長してもらうよう申し立てることができます(その申し立てを受けて家庭裁判所はその期間を伸ばすことができます)
□ 熟慮期間の伸長の手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:相続の承認又は放棄の期間の伸長)でご確認下さい

【3】単純承認
□ 相続の承認のうち、引き継ぐ資産や負債の範囲を定めずに受諾することを、単純承認といいます。特別な手続きは必要ありませんし、相続人が複数いるときでも単独でできます。
□ 単純承認をした場合、相続人は被相続人の資産と負債を無限に引き継ぐことになります。仮に被相続人の財産内容が、資産より負債の方が多い状態(=債務超過)のときは、相続人は、自らの財産でその負債を弁済する義務を負います。
□ 債務超過が想定されるときの選択肢として、相続人は限定承認や相続の放棄の申述をすることができますが、3ヶ月の熟慮期間内にこれらの申述をしなかった相続人は、単純承認をしたものとみなされます
□ 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなされます(=法定単純承認)
(1)相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
(2)相続人が3ヶ月の熟慮期間内に限定承認または相続の放棄をしなかったとき
(3)相続人が限定承認または相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき

【4】その他
□ 一度した相続の承認または放棄は、熟慮期間が残っていたとしても、撤回することはできません
□ 単純承認・限定承認・相続の放棄がなされるまでは、相続財産が不安定な状態に置かれるため、相続財産の散逸や破損を防ぐため、相続人は、自己の固有財産と同一の注意をもって管理する義務を負います
□ 限定承認と相続の放棄については、Q14をご覧下さい

Q14.相続財産のうち借金の方が多い場合相続しないことはできますか

A.相続の放棄をすれば相続しないことはできますが、限定承認をすることも考えられます

【1】限定承認
□ 限定承認では、『相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる』とされています
□ 限定承認も相続の承認の1つですから、単純承認と同じく、被相続人の資産と負債は相続人に引き継がれます。ただし、引き継いだ負債を返済する『責任』は、引き継いだ資産を限度にしか負わないという点で単純承認と異なります。
□ 限定承認をした場合、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務および遺贈を弁済すればよいことになり、相続人が自らの財産を持ち出してまでその負債を弁済する義務はありません。限定承認の選択は次のケースで考えられます。
(1)相続財産について、資産が多いのか負債が多いのか(=債務超過かどうか)がはっきりしない場合
(2)相続財産が、資産<負債(=あきらかに債務超過)の状態ではあるが、手放したくない財産があるため相続の放棄はしたくない場合
□ 限定承認により、相続財産が資産≧負債のときは差引プラスで相続することができ、相続財産が資産<負債のときでもプラスマイナスゼロで相続することができます
□ 限定承認は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間内)に、財産目録を調製のうえ、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述しなければなりません
□ 相続人が複数いるときは、共同相続人の全員が、共同して限定承認をしなければなりません
□ 限定承認では、相続財産を原則競売に付して換価しなければなりません
□ 限定承認の撤回をすることはできません
□ みなし譲渡所得課税・・・限定承認があったときは、限定承認にかかる相続が開始した時に、その時における時価で、被相続人から相続人に対して、財産の譲渡があったものとみなして、譲渡所得税が課税されることになりますので、準確定申告が必要となります
□ 限定承認の手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:相続の限定承認の申述)でご確認下さい

【2】相続の放棄
□ 相続の放棄により、その相続人はその相続について最初から相続人でなかったものとされ、その相続事案とは無関係になります。遺産分割協議に参加する資格も当然ありません。
□ 遺産分割協議のなかで、『財産を全く取得しない』という『事実上の相続放棄』がありますが、これは相続人の地位を確保したまま、単に遺産をもらわないというだけで、法律上の相続放棄ではありません=相続債務を免れることはできません
□ 相続の放棄は、代襲相続の原因(以前死亡、相続欠格、廃除)の何れにも該当しないので、相続を放棄した者の子は代襲相続をすることができません
□ 相続の放棄を撤回することはできません
□ 相続財産が資産<負債(=債務超過)の相続事案では、一般的に相続の放棄を検討されるとよいでしょう。相続財産に属する負債を、相続人固有の財産から弁済する必要がない点では限定承認と似ていますが、相続の放棄は、相続人になることを拒否する制度です。それぞれ効果が異なりますので、単純承認しない場合は、限定承認するか相続の放棄をするか十分な検討が必要です。

【3】相続の放棄の手続き方法
□ 相続人は、被相続人の権利義務(資産と負債)を一切引き継ぎたくないときは、相続の放棄という手続きをしなければなりません
□ 相続人が複数いるときでも、単独でできます(共同相続人の全員が共同して相続の放棄をする必要はありません)
□ 相続の放棄は、口頭や内容証明などではできません。また、生前に相続の放棄をすることもできません。
□ 相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間内)に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述しなければなりません
□ 3ヶ月の熟慮期間を過ぎてしまった相続事案については、原則、相続の放棄をすることはできませんが、一定の要件を満たせば、3ヶ月を過ぎても相続の放棄が認められる場合があります。相続事案に応じて手続きをとることが重要です。
□ 相続の放棄の手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:相続の放棄の申述)でご確認下さい

【4】相続の放棄と準確定申告の関係
□ 被相続人の準確定申告にあたり、納税額が発生した場合(負債)、還付となった場合(資産)ともに、被相続人の相続財産となります
□ 被相続人の準確定申告につき、相続の放棄をした後は、準確定申告書を提出すべき相続人の一員ではなくなった訳ですから、準確定申告に関わることはありません。また、相続の放棄前に準確定申告書を提出(還付請求)した場合は、相続を承認したものとされ、相続の放棄ができないという考えもあるようです。

【5】相続の承認と放棄のまとめ
□ どのような資産があるか、負債があるか、相続財産を把握すること
□ 遺産分割協議の要否を確認すること
□ 自己にとっての熟慮期間の起算点を確認すること
□ 熟慮期間の伸長が必要かどうか検討すること
□ 単純承認、限定承認、相続の放棄をした場合の効果を確認すること
□ 限定承認と相続の放棄については、法定の手続きをとること
□ 相続税または所得税など、税金の申告の要否を確認すること

・・・単純承認、限定承認、相続の放棄については、それぞれ効果や手続きの方法が異なります。相続が発生したときは、相続人が相続財産(資産と債務)の全てを必ず承継しなければならないというわけではありませんので、それぞれの相続事案に応じて十分に検討し、選択して下さい。

※相続の承認、熟慮期間、単純承認については、Q13をご覧下さい

Q15.相続できる最低限の割合はどれくらいですか

A.遺留分についてご説明します

【1】遺留分と遺留分減殺請求について
□ 被相続人の財産形成には家族の協力を無視することはできないでしょうから、被相続人の死亡により、遺族が生活の保障として遺産につき公平な分配を期待することは自然な流れといえます。その一方で、被相続人は有する財産を生前に贈与することや、法定相続人でない者に遺贈する遺言など、被相続人の意思で自由に処分することができます。遺留分は、遺族の期待と財産処分の自由を調整するための制度といえます。
□ 相続人は、被相続人の有していた相続財産について一定の割合を承継できることが保障されていますが、この最低限の保障割合を遺留分といいます。そして、この割合を侵害された相続人は、侵害している他の相続人からその侵害額を取り戻すことができますが、この取り戻す行為を遺留分減殺請求といいます。

※遺留分権利者になれる者の範囲、遺留分の割合は『遺留分の減殺請求(その1)』で、遺留分侵害額の算定方法、遺留分減殺請求
の手続きは『遺留分の減殺請求(その2)』で確認できます

遺留分1と2

【2】遺留分減殺の順序

□ 遺留分権利者は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、贈与や遺贈などの減殺を請求することができます。減殺する順序は、遺贈→死因贈与→贈与の順となりますが、この順序に従って減殺をしてもまだ減殺しきれないときに、はじめて次順位の行為を減殺します。
□ 複数の遺贈がある場合は、遺言書の時期に関わらず、全部の遺贈について、目的物の価額の割合に応じて減殺します。なお、遺言書で減殺の順序など別段の意思表示があったときはそれに従います。
□ 複数の贈与がある場合は、相続開始時に日付の近い贈与から順次過去の贈与を減殺します
□ 遺留分減殺請求を受けた受遺者等は、原則、その目的物を現物で返還する必要がありますが、代わりに、減殺を受ける限度で目的物の価額(金銭)を弁償することで目的物を返還する義務を免れることができます。現物か金銭かの選択権は受遺者等にありますが、価額弁償による支払い額は、現実に弁償されるときの目的物の価額とされます。
□ 遺留分の減殺請求については当事者間の話し合いで解決するのが理想ですが、話し合いがまとまらないときは調停を申し立てることができます。遺留分減殺に関する調停手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:遺留分減殺による物件返還請求調停)でご確認下さい。

【3】経営承継円滑化法との関係
□ 相続が発生した際に、株式の分散や相続税納税資金の確保などの悩みに対応するために創設された『経営承継円滑化法』では、以下の合意をすることができます(=遺留分に関する民法の特例といいます)。例えば、自社株式を承継者に生前贈与したとすると、民法上では遺留分制度があるため遺留分減殺請求の問題が関係してきますが、この特例により中小企業の事業承継が柔軟にできるようになりました。
(1)除外合意・・・生前贈与株式等を、遺留分算定の基礎となる財産に算入しないこと=遺留分の対象から除外すること
(2)固定合意・・・遺留分算定の基礎となる財産に算入する際の生前贈与株式等の価額を、合意時点の価額とすること=予め評価額を固定すること
□ 遺留分に関する民法の特例の裁判所手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:遺留分の算定に係る合意の許可)でご確認下さい

【4】遺留分減殺請求に基づき返還すべき額等が確定した場合の課税関係★
□ 相続税の申告後、遺留分減殺請求を受けて返還または弁償すべき額が確定したことにより財産の移動があった場合には、次の(1)(2)のとおり申告内容を是正することになります
(1)減殺請求を受けた受遺者等は、(取得財産が減ったため)減殺された額に対応する相続税額の減額を求めて、その確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求をすることができます
(2)遺留分権利者は、(取得財産が増えたため)減殺請求により遺贈財産等の返還等を受けて増加する課税価格に応じた相続税の期限後申告書、または修正申告書を提出する必要があります
□ このほか、減殺請求を受けた受遺者等がすでに申告した贈与税の更正の請求や、特定贈与者の死亡に係る相続税の計算において相続時精算課税適用者の相続税の課税価格に算入される価額の計算、減殺に伴う修正申告および更正の請求における小規模宅地等の選択替えの可否など、遺留分に関連した課税関係が考えられます

【5】遺留分の放棄
□ 相続開始後に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所への手続きは不要で、遺留分減殺請求の相手方に対して意思表示をするだけで足ります
□ 相続開始前の放棄は裁判所の許可が必要です。遺留分放棄の手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:遺留分放棄の許可)でご確認下さい。
□ 共同相続人のうちの1人が遺留分を放棄したときでも、被相続人が自由に処分できる財産の範囲が増えるだけで、他の相続人の遺留分が増えることはありません。また、遺留分の放棄が相続の開始前であれ開始後であれその効果に差はありません。
□ 遺留分を放棄しても相続権を失うことはありません。相続の放棄や限定承認を選択する場合は、改めてそれぞれの手続きが必要です。

Q16.相続人が誰もいないとき、遺産はどうなりますか

A.相続人がいないときは、最低でも13ヶ月の期間をかけて相続人の捜索、債務の弁済、特別縁故者への分与を経た後、遺産は最終的に国庫に帰属することになります

【1】相続人が不存在のときは相続財産法人が成立する
□ 民法では、被相続人の死亡後『相続人のあることが明らかでないときは、相続財産を法人とする』と規定しています。法人とするとは、相続財産に属する権利義務を承継するはずの相続人がいないことから、相続財産の管理や清算による最終的な帰属が決まるまでの相続関係の処理に対応するための措置で、この状態におかれた相続財産を相続財産法人といいます。
□ 相続人のあることが明らかでないときには、相続人の全員が相続の放棄をしたため、結果的に相続する者が誰もいなくなった場合を含みますが、相続人が行方不明または生死不明のときは該当しません
□ 相続する者が誰もいなければ、相続財産は最終的に国庫に帰属することになりますが、国庫に帰属するまでには、本当に相続人がいないかを捜すための公告や相続財産の清算、特別縁故者への分与などの過程を経る必要があるため、【13ヶ月以上の期間を設けて】手続きをすすめることになります。

【2】相続財産管理人の選任と公告
□ 相続財産法人を成立するために特別な手続きは必要ありませんが、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の申し立てにより相続財産管理人を選任しなければならないことになっています。相続財産管理人は、相続財産法人の代表者となり相続財産の管理や清算、相続人の捜索にあたります。なお、利害関係人とは、被相続人の債権者や債務者、受遺者、特別縁故者などをいいます。
□ 家庭裁判所は、相続財産管理人の選任後遅滞なくその旨を公告しなければなりませんが、相続財産管理人の選任手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:相続財産管理人の選任)でご確認下さい
□ この公告を【第1回目】の相続人の捜索と位置付けて、【2ヶ月の公告期間】で相続人が現れるのを待ちます。2ヶ月以内に相続人が現れたときは、その者が相続財産を承継するため相続財産法人は遡及的に消滅し、現れなかったときはさらに捜索を続けます。

【3】相続債権者等に対する債権申出の公告
□ 上記【2】の公告期間内に相続人が現れなかったときは、相続債権者および受遺者に対し、さらに2ヶ月以上の期間を定めて『債権の申出をすることと、申出がないときは除斥される旨』の公告をしなければなりません
□ この公告後【2ヶ月以上の公告期間】でも相続人のあることが明らかにならなかったときは、限定承認における清算手続きに準じて相続財産の清算が開始され、申告債権者や知れたる債権者へ弁済がなされます。また、この公告を【第2回目】の相続人の捜索と位置付けて、現れなかったときはさらに捜索を続けます。

【4】相続人の権利主張を求める公告
□ 上記【3】の公告期間を経過しても相続人が現れなかったときは、家庭裁判所は、相続財産管理人または検察官の請求により、さらに6ヶ月以上の期間を定めて『相続人があるならばその権利を主張すべき旨』の公告をしなければなりません
□ この公告を【第3回目】の相続人の捜索と位置付けて、【6ヶ月以上の公告期間】で相続人が現れるのを待ちますが、この期間を経過しても相続人が現れなかったときは、これで相続人の捜索は終了し『相続人の不存在が確定』することになります

【5】特別縁故者への財産分与と国庫への帰属
□ 相続人の不存在が確定した場合でも、家庭裁判所が相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故のあった者の請求に対し、清算後残った相続財産の全部または一部を与えることができるとされています
□ 特別縁故者とは相続権のない次の(1)~(3)に該当する者をいい、例えば、内縁の妻、事実上の養子、子の配偶者、同居人、献身的な世話をした者、雇用主、勤務先などが考えられます。また、個人だけでなく法人(団体)もなることができます。
(1)被相続人と生計を同じくしていた者
(2)被相続人の療養看護に努めた者
(3)その他相続人と特別の縁故があった者
□ 特別縁故者が相続財産につき分与を受けるには、上記【4】の公告期間の満了後、【3ヶ月以内】に家庭裁判所に請求をしなければなりませんが、特別縁故者に対する相続財産分与手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:特別縁故者に対する相続財産分与)でご確認下さい。
□ 特別縁故者への分与後相続財産に残余があるときは、その残余財産は国庫に帰属することになります→被相続人の遺産が国のものになります

【6】相続人の不存在と税金の申告手続き
(1)被相続人の所得税の準確定申告について
相続人が不存在の場合の所得税の準確定申告手続きについては、相続財産法人が納税義務を承継することとされているため、『相続財産法人は、年の中途で死亡した被相続人のその年1月1日から死亡した日までの所得金額について、所得税を計算した準確定申告書を、相続財産管理人が確定した日(裁判所から管理人に通知された日)の翌日から4ヶ月以内に、被相続人の死亡時の納税地を所轄する税務署に提出』しなければなりません
(2)特別縁故者が財産の分与を受けた場合の相続税の課税関係
□ 財産の分与を受けた特別縁故者は、分与を受けた財産を遺贈により取得したものとされます。財産の評価額は、相続の開始時(被相続人の死亡日)ではなく、分与時の相続税評価額とします。
□ 分与を受けた財産の価額が基礎控除額を超える場合は、『分与を受けることを知った日(分与に係る審判があったことを知った日)の翌日から10ヶ月以内』に、相続税の申告と納税が必要となります

Q17.遺言書を作成した方が良いと思われるのはどのようなケースですか

A.遺言の効果と遺言できる内容について確認して下さい

【1】遺言の効果
□ 遺言により、法定相続分と違う割合で、または相続人以外の者に財産を残すことができます(ただし、遺留分までは侵害できないため、侵害する内容の遺言では遺留分減殺請求の可能性が残ります)
□ 遺言があれば法定相続分に優先します。遺言内容をもって財産の帰属が確定するため、遺産分割協議におけるトラブルの回避に繋がります。ただし、全員の合意があれば、遺言内容に従わず遺産分割協議による分割をすることもできます。
□ 遺言書は作成した時に成立しますが、効力は、遺言者の死亡の時に発生します
□ 遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じません(=同時存在の原則)
□ 遺言の作成後においても、遺言に拘束されることはありません。その為、遺言内容の変更や撤回のほか、遺言の対象物を自由に処分することが可能です。

【2】遺言能力
□ 有効な遺言であるには、遺言能力(遺言を書く能力)があることが必要です。民法では、未成年者でも満15歳以上の者は、法定代理人の同意を得ることなく遺言を書くことができます。
□ 未成年者(満15歳以上の者に限る)、成年被後見人、被保佐人、被補助人でも意思能力がある(=自分の行為の結果を判断することができる)限り単独で遺言が可能です。なお、通常意思能力がないとされる成年被後見人については、事理弁識能力が一時的に回復したときに、医師2人以上の立会いのもとに作成された遺言は有効です。
□ 遺言作成時に遺言能力を有していることが必要であり、遺言作成後に意思能力を失っても遺言は有効です

【3】遺言事項(遺言でできる行為)
□ 遺言でできる行為には、(1)法律で限定された法定遺言事項と、(2)法律的な効果は生じない付言事項があります
□ (1)のうち※は遺言でのみできる(=生前ではできない)行為です
(1)法定遺言事項は、以下のとおり限定されています
①※相続分の指定または指定の委託
②相続人の廃除、廃除の取消し
③※遺産分割方法の指定または指定の委託、遺産分割の禁止
④※遺贈の減殺方法の指定
⑤遺贈
⑥認知
⑦※未成年後見人または未成年後見監督人の指定
⑧※遺言執行者の指定または指定の委託
⑨祭祀主宰者の指定
⑩※特別受益の持戻し免除
⑪生命保険金の受取人の指定および変更
⑫財団法人への寄附行為
⑬信託の設定(信託法)
⑭※相続人の担保責任の指定
(2)付言事項に法律的な効果はありません。一般に相続人に残しておきたい言葉や思いを記すものです。遺言者の最後のメッセージと言われます。
①残す財産の割合に差をつけた理由
②相続人以外の者に財産を残す経緯
③家族への感謝の気持ち
④葬式や法要の方法、献体や散骨を希望する趣旨
⑤家族、親族の付き合いと融和についての希望など

【4】遺言の方式
□ 普通方式と特別方式に大別されます。それぞれ個別に作成要件等が規定されており、これらの方式に従っていない遺言は無効です。
□ 紙の種類(便箋、原稿用紙、ハガキ、コピー用紙など)、筆記用具(鉛筆、ボールペン、筆など)については問いませんが、ビデオ録画やテープ録音は認められません
□ 2人以上の者が同じ書面、証書で遺言する『共同遺言』は禁止され、原則無効となります
□ 普通方式には①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言があります
□ 特別方式は、疾病その他の事由、船舶遭難など普通方式に従った遺言ができないほど遺言者に死亡の危機が差し迫っている場合の危急時遺言(④一般危急時遺言と⑤船舶遭難者遺言)と、一般社会との交通が絶たれて遺言者が隔離されている環境で作成する隔絶地遺言(⑥一般隔絶地遺言と⑦在船者遺言)に区別されます
□ 特別方式の遺言(④~⑦)は、遺言者が普通方式によって遺言することができるようになった時から6ヶ月間生存するときは、遺言としての効力がなくなります

【5】遺言の撤回
□ 遺言者は、いつでも、何回でも、遺言の方式で、その遺言の全部または一部を撤回することができます
□ 同じ方式でなくても構いませんが、遺言方式により『撤回する旨』を後の遺言に明記する必要があるため、内容証明書などで意思表示をしても撤回したことになりません
□ 前の(日付の古い)遺言で『土地甲をAに遺贈する』とあるを、後の(日付の新しい)遺言で『土地甲をBに遺贈する』と書けば、『土地甲の遺贈』部分について抵触することになり、後の遺言で前の遺言を撤回したことになります
□ 遺言の対象物を生前に処分し、または遺言書を破棄したときも撤回したものとみなされます
□ 撤回の権利は放棄できないとされています。例えば、遺言書に『この遺言内容は絶対に撤回しない』と書いた場合であっても、撤回は可能です。なお、撤回した内容を撤回(=再撤回)しても、原則回復はしないとされています。
□ 遺言が複数存在する場合、①内容が抵触している部分は、作成日が後の遺言が有効、②内容が抵触していない部分はどちらも有効と判断されます。日付の前後に加え撤回の仕方により優劣は判断されます。

【6】遺言書が必要と思われるケース

※1つでも当てはまる方は遺言書の準備を
お考え下さい

遺言書が必要と思われるケースを確認しましょう

Q18.自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の違いは何ですか

A.3つの遺言方式の比較と遺言作成のポイントをご確認下さい

【1】遺言方式のまとめ

※3つの遺言方式の特徴を比較して下さい
自筆証書・公正証書・秘密証書遺言の比較

【2】自筆証書遺言の特徴
□ 遺言者本人が①全文、②日付、③氏名を自書し→押印して作成する必要があります
□ 日付は遺言書の作成日が特定できれば年月日でなくても構いませんが、遺言書の全文を書き終えた日をハッキリと書いた方が間違いありません。遺言作成時点を明らかにしておくことで、遺言時の年齢や遺言能力、遺言撤回の意思といった遺言の有効要件を判別する手がかりにもなります。
□ 氏名は遺言者(本人)が特定できれば通称やペンネームでも構いませんが、戸籍上の氏名を書いた方が間違いありません
□ 押印のない遺言は無効です。印鑑は実印のほか、認印や拇印でも構いませんが、実印が良いでしょう。
□ 遺言内容の加除・訂正
(1)公正証書遺言以外の場合で、遺言内容を加除・訂正するときは、遺言者が①訂正場所を指示し、②訂正した旨を付記し、③訂正場所に署名のうえ押印しなければなりません
(2)(1)の要件を満たしていない(方式の不備による)加除・訂正は、なかったものとして取り扱われ、遺言自体が無効になる危険性もあるので注意が必要です
□ 検認と開封手続き
(1)公正証書遺言以外の遺言書の保管者または発見した相続人は、家庭裁判所での検認手続きを経なければなりません。遺言書の検認手続きについては、裁判所ウェブサイト(手続き名:遺言書の検認)でご確認下さい。
(2)遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の存在と成立を明らかにして、後日における遺言書の偽造・変造を防ぐ目的で遺言書を調査する手続きをいいます
(3)検認は単なる証拠の保全手続きにすぎず、遺言の有効性を判断する手続きではありませんので、『検認を受ければ有効または真正○、検認を受けないと無効×』ということはありません。ただし、検認手続きを怠った場合は5万円以下の過料に処されます。
(4)封印のある遺言書は、 家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いのもと開封することが規定されており、開封と検認とが同一の手続きで行われるのが一般的です。なお、単に『封入された遺言書』は『封印のある遺言書』に含まれません。
(5)開封手続きの有無も遺言の効力そのものに影響は与えませんが、開封手続きを怠った場合も5万円以下の過料に処されます

【3】公正証書遺言の特徴
□ 証人2人以上の立会いのもと→遺言者が遺言内容を公証人に口授(口頭で伝える)し→公証人がその内容を筆記し→公証人が遺言者に読み聞かせまたは閲覧させ→遺言者および証人が承認し各自署名押印し→公証人が署名押印して作成する必要があります
□ 次の者は、遺言の証人または立会人になることができません
(1)未成年者
(2)推定相続人・受遺者ならびにこれらの者の配偶者および直系血族
(3)公証人の配偶者・4親等内の親族・書記および雇い人
□ 公正証書遺言は、常に検認および開封手続きを要しません
□ 公正証書遺言の作成については、日本公証人連合会新潟公証人合同役場のサイトで確認することができます

【4】秘密証書遺言の特徴
□ 遺言者が遺言書を作成のうえ自書押印し→押印した印鑑で封印し→公証人および2人以上の証人の立会いの面前に封書を提出し→自己の遺言書である旨および氏名・住所を申述し→公証人が封紙に日付などを記載し→遺言者および証人が各自署名押印し→公証人が署名押印して作成する必要があります
□ 遺言の証人または立会人については、公正証書遺言の取り扱いと同様です
□ 遺言内容の加除・訂正については、自筆証書遺言の規定が準用されます
□ 検認および開封手続きが必要とされます
□ 秘密証書遺言の場合は、自筆証書遺言の方式を具備(全文の自書など)しているときは、自筆証書遺言として有効とされる特徴があります

【5】遺言書作成のポイントチェック

※(1)【準備編】(2)【活用編】がありますの
で、遺言を作成する際の参考にして下さい

遺言書の作成ポイントチェック(1)【準備編】

Q19.遺贈について知っておくべきことはありますか

A.包括遺贈と特定遺贈の違いについてご確認下さい

【1】遺贈の概要
□ 遺言により財産を無償で与えることを、遺贈といいます
□ 遺言者=被相続人=遺贈者であり、財産を取得した者(遺贈により利益を受けた者)を受遺者といいます
□ 遺贈は財産の与え方の違いにより、包括遺贈と特定遺贈に区分されます
□ 受遺者になることができる者は以下のとおりであり、遺言の効力発生時に生存していることが必要です(=同時存在の原則)
(1)自然人
(2)胎児(死産の場合は受遺者となりません)
(3)法人
□ 受遺者が遺贈の承認または放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認または放棄をすることができます(ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うことになります)
□ 相続欠格者は受遺欠格者とされ、特段の手続きをせずに遺贈を受ける資格が剥奪されます。また、受遺欠格者に対する遺贈を規定した遺言は、その条項について無効となります。

【2】包括遺贈
□ 包括遺贈とは、『全財産をAに遺贈する』や『全財産の1/3をBに遺贈する』など、財産を特定せず財産の全部または一部を一定の割合で与える遺贈をいい、包括遺贈により財産を取得した者を包括受遺者といいます
□ 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされており、以下の点で相続人と同一の取り扱いがされます
(1)資産(積極財産)だけでなく、負債(消極財産)も引き継ぐ対象となります
(2)遺贈の承認と放棄については、相続の承認と放棄の規定が適用されます。したがって、包括受遺者が遺言の内容を放棄したいときは、3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の手続きをしなければなりません。
(3)相続放棄の手続きがなければ、単純承認したものとみなされます
(4)遺産分割協議の当事者となり、相続人と同様に分割協議に参加します
□ 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされているものの、以下の点で相続人と異なります
(1)受遺者が遺言者より先に死亡していたときはその遺言は失効するため、受遺者の子が代襲して遺贈を受けることはできません
(2)受遺者には遺留分がありません
(3)相続人の1人が相続の放棄をした場合でも、受遺者の相続分は変わりません
(4)包括受遺者は、保険金受取人としての相続人には含まれないとされます

【3】特定遺贈
□ 特定遺贈とは、『現金1,000万円を甲に遺贈する』や『土地Cを乙に遺贈する』など、財産を具体的に特定して与える遺贈をいいます
□ 特定遺贈は、包括遺贈と以下の点で異なります
(1)遺言に指定がない限り、負債(消極財産)を引き継ぐことはありません
(2)特定遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後いつでも遺贈を放棄することができます。時間的な制限はなく、遺贈義務者に対する意思表示で足りるため、家庭裁判所への申述も不要です。
(3)受遺者がいつまでも承認または放棄をしないときは、遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定めて、遺贈を承認するかまたは放棄するかを受遺者に催告することができます。その期間内に受遺者が意思表示をしないときは、遺贈を承認したものとみなされます。なお、受遺者の承認または放棄は撤回することができません。
(4)遺産分割協議の当事者ではありませんので、協議に参加することはできません

【4】遺贈義務者
□ 遺贈義務者とは、遺贈に伴う手続きや行為を履行する義務を負う者をいい、相続人のほか以下の者が該当します
(1)相続人(原則)
(2)包括受遺者
(3)相続財産法人の管理人
(4)遺言執行者
□ 遺贈義務者は、目的物の引渡行為を行う責任や、不動産移転登記の際の登記義務者の地位たる責任を伴うことになります
□ 不特定物が遺贈された場合、受遺者が遺贈された物について第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は売主と同じ担保責任を負います。また、目的物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は瑕疵のない物と代える義務を負います。

【5】遺言執行者
□ 遺言内容を実現させる者を、遺言執行者といいます。立場上は相続人の代理人ですが、遺言者に代わって遺言内容を実現する者といえます。
□ 遺言執行者になれる者は、自然人と法人であり、相続人以外の第三者もなることができますが、未成年者と破産者はなることができません
□ 遺言執行者は、財産目録の作成、名義変更、遺贈の目的物の引き渡しなど、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。これにより、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為はできず、相続人が無断で行った処分行為は無効とされます。
□ 遺言の執行は相続人等でできることが多いため、必ず遺言執行者を選任しなければならない訳ではありません。相続人同士の利害が対立する事案や第三者に対する遺贈が含まれる事案などでは、特に専門家を遺言執行者に指定することで遺言の実現がスムーズにすすむことが期待できます。なお、認知の届出、相続人の廃除・取消しは、遺言執行者が必要になります。
□ 遺言執行者は遺言による指定または指定の委託を経て選任されますが、承諾するか否かは自由であり拒否することもできます。なお、指定された者がいつまでも諾否を決定しないのでは遺言内容が実現しませんので、利害関係人は、相当の期間を定めて、承諾するかどうかを指定された者に催告することができます。その期間内に指定された者が意思表示をしないときは承諾したものとみなされます。
□ 遺言執行者が必要な場合で遺言による指定がなかったときは、利害関係人の請求により家庭裁判所が遺言執行者を選任します

Q20.寄与分と特別受益について





Q29.相続があった場合の遺産手続きはどのようなものがありますか

A.相続があった場合は、以下のような遺産手続きが必要です


【3】相続に関する審判または調停の手続きについては、裁判所ウェブサイトで確認
□ 相続人が被相続人の相続について、承認または放棄をする期間を伸長するとき・・・手続き名:相続の承認又は放棄の期間の伸長
□ 相続人が相続によって得た財産の限度で、被相続人の債務の負担を受け継ぐとき・・・手続き名:相続の限定承認の申述
□ 相続人が被相続人の権利(財産)や義務(債務)を、一切受け継がないとき・・・手続き名:相続の放棄の申述
□ 遺留分について、当事者間での話し合いがまとまらない、または話し合いができないとき・・・手続き名:遺留分減殺による物件返還請求調停
□ 経営承継円滑化法に関連して、遺留分の算定についてなされた合意の許可を求めるとき・・・手続き名:遺留分の算定に係る合意の許可
□ 相続人が被相続人の生前に、相続財産に対する遺留分を放棄するとき・・・手続き名:遺留分放棄の許可
□ 相続人の存在が明らかでないとき・・・手続き名:相続財産管理人の選任
□ 特別な縁故関係にあった人が相続財産の分与を受けるとき・・・手続き名:特別縁故者に対する相続財産分与
□ 遺言書を保管し、または発見したとき・・・手続き名:遺言書の検認
□ 遺言を執行する人が指定されていないとき、または遺言執行者がなくなったとき・・・手続き名:遺言執行者の選任

Q30.税金の申告手続きはどうなりますか

A.被相続人の所得税、消費税、住民税、固定資産税の申告手続きと相続税の申告が必要かどうかをご確認下さい

【1】所得税と消費税の申告手続き
□ 相続人は、年の中途で亡くなられた方(被相続人)のその年1月1日から亡くなられた日までの所得金額について所得税を計算し、確定申告書を連名で作成のうえ、提出および納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。
□ 準確定申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、被相続人の死亡時の納税地を所轄する税務署に提出します
□ 準確定申告で計算された納付すべき所得税は負債として、還付を受けることができる金額は資産として、どちらも相続財産になります
□ 被相続人が消費税の課税事業者であった場合は、上記の取り扱いと同様に、相続人は、消費税の準確定申告手続きをしなければなりません

【2】住民税の納付手続き
□ 住民税は、その年1月1日現在住所のある市町村において、昨年中の所得に対して課税されます(毎年5月頃に納税通知書が送られてきます)
□ 昨年中および本年1月1日に亡くなられた方に対しては、本年度の住民税(昨年中の所得に対するもの)は課税されません
□ 本年1月2日以降に亡くなられた方に対しては、本年度の住民税(昨年中の所得に対するもの)は課税されますが、来年度の住民税(本年1月1日から亡くなられた日までの所得に対するもの)は課税されません
□ 所得税の確定申告書を提出している場合は、住民税の申告書を改めて提出する必要はありません

【3】固定資産税の納付手続き
□ 固定資産税は、その年1月1日(賦課期日)現在の所有者に課税されます。年の中途で亡くなられた場合でも、固定資産税に月割り計算はありませんので、年額を納付しなければなりません。
□ 被相続人の名義で賦課された固定資産税については、相続人が納税義務を引き継ぐことになります
□ 相続登記をすることで翌年度分の固定資産税については、各相続人(新たな所有者)名義で賦課されます。相続登記がされるまでは、固定資産税納税のための相続人代表者を決定して、納付を取りまとめることになります。なお、代表者の決定は相続登記や相続税の申告に影響を及ぼしません。

【4】相続税の申告手続き
□ 相続または遺贈により財産を取得した場合でも、相続税の申告が必要とは限りません。申告が必要か不要かの判定は、次の(1)または(2)の何れかによります。
(1)正味の遺産額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要となります
(2)正味の遺産額が、遺産に係る基礎控除額以下の場合は、相続税の申告は必要ありません
□ 申告が必要と判定されたときは、相続税の申告書を、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署に提出し、かつ相続税を納付しなければなりません
□ 基礎控除額は、【5,000万円+1,000万円×法定相続人の数】で計算します。【3,000万円+600万円×法定相続人の数】となる改正案はまだ成立していませんが、改正後からは相続税の申告が必要となる事案が増えると予想されます。改正時期にご注意下さい。
□ 相続税法では、小規模宅地等の減額(一定の財産の評価額を最大で80%減額する特例)や、配偶者の税額軽減(配偶者の相続税を軽減またはゼロとする特例)など、申告することを条件に受けられる特例があります。相続税の申告が必要かどうかの判定は、これらの特例を受ける前の金額で比較・判定することになり、これらの特例を受けることができた結果、相続税がゼロになる場合もありますが、納税額がゼロ=申告不要とは限りませんので判定にはご注意下さい。

※申告判定のイメージは、
『相続税のしくみ(1)-相続財産と申告判定-』で確認できます

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関東信越税理士会所属

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