譲渡所得のしくみ

相続税・贈与税・譲渡所得などの資産税、土地や非上場株式などの財産評価に関するページです。一生に一度は必ず納付するという税金ではありませんが、複雑な事案もあり、取り扱う金額が大きいため納税額に連動することから、正確な判断が求められるとても重要な税金となります


【 譲渡所得のしくみ 】
◇ 譲渡所得とは
◇ 
譲渡所得のうち非課税となる(所得税の課税されない)もの
◇ 譲渡所得の金額の計算
◇ 譲渡の日と取得の日
◇ 分離課税の特別控除とその他の特例
◇ 税額の計算(税率)
◇ 譲渡価額と取得費と譲渡費用
◇ 譲渡損が生じた場合の取り扱い
◇ みなし譲渡の取り扱い
◇ 譲渡所得として課税される部分のイメージ図
◇ 居住用財産の3,000万円の特別控除
◇ 所有期間が10年を超える場合の軽減税率の特例
◇ 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除
◇ 居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
◇ 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
◇ 収用等の5,000万円控除と代替資産を取得した場合の課税の特例
◇ 特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例

◇ 固定資産の交換の場合の課税の特例
◇ その他の特例

【 株式譲渡のしくみ 】
◇ 株式等を売ったとき

譲渡所得とは

【1】譲渡所得の意義
□ 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいます
□ 資産を所有していた期間における価値の変動(=値上がりまたは値下がり)による損得については、所有期間中に変動の都度認識するのではなく、資産を手放したときに実現させようとする考え方によります
□ 表現としては、所有期間における値上がり=譲渡益=譲渡による儲けであり、所有期間における値下がり=譲渡損=譲渡による損失となります

【2】譲渡所得の起因となる資産の範囲
・・・譲渡所得の起因となる資産とは、次の(1)に掲げる資産以外の一切の資産をいいます
(1)譲渡所得の起因となる資産から除かれる資産の例示と所得区分
□ たな卸資産・・・事業所得
□ 準たな卸資産・・・事業所得または雑所得
□ 少額減価償却資産、一括償却資産(業務の性質上重要な資産を除く)・・・事業所得または雑所得
□ 営利を目的として継続的に譲渡する資産・・・事業所得または雑所得
□ 山林(立木)・・・事業所得または山林所得、雑所得
□ 貸付金や売掛金などの金銭債権・・・事業所得または雑所得
(2)譲渡所得の起因となる資産の例示
□ 土地、借地権、建物、構築物、山林のうち土地部分
□ 株式等、特定の公社債
□ 少額減価償却資産や一括償却資産のうち業務の性質上重要な資産で一定のもの
□ 金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、ゴルフ会員権、特許権、著作権、土石(砂)など

【3】譲渡の範囲
・・・譲渡所得の起因となる資産の譲渡は、有償であるか無償であるかを問いません
(1)所有権の移転があるもの
□ 売買、交換
□ 競売、公売
□ 代物弁済(原則、代物弁済により消滅する債務の額で譲渡したと考えます)
□ 離婚に伴う財産分与(財産分与をした方に譲渡所得が課税されます)
□ 収用に伴う対価補償金
□ 代償分割による資産の移転
□ 法人に対する現物出資(取得した株式の時価で譲渡したと考えます。ただし、その価額が出資した不動産の時価の1/2未満の場合は、出資した不動産の時価とみなされます)
□ 法人に対する資産の贈与、遺贈、または時価の1/2未満の価額により譲渡した場合(時価で財産の譲渡があったものとして課税されます)
□ 限定承認による相続があった場合(時価で財産の譲渡があったものとして課税されます)
(2)所有権の移転がないもの
□ 1億円以上の有価証券等を所有している一定の居住者が国外転出等をする場合(平成27年7月1日以後に適用されます)
□ 建物や構築物を所有するために地上権や賃借権、地役権を設定して受け取った権利金など(原則、その金額が借地権の設定された土地の時価の1/2を超える場合)

【4】譲渡損益の計算
□ 資産を譲渡したことによる儲け(=値上がりまたは値下がりによる損得)を譲渡損益といいます
 <計算式>譲渡損益=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
□ 譲渡価額>(取得費+譲渡費用)・・・譲渡益(課税対象となります)
□ 譲渡価額<(取得費+譲渡費用)・・・譲渡損(更に他の所得と損益通算できるか検討します)

譲渡所得のうち非課税となる(所得税の課税されない)もの

【1】生活に通常必要な動産の譲渡による所得
・・・生活用動産については原則として非課税ですが、名称または金額により課税されるものと非課税とされるものが分かれます
(1)家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの譲渡
(2)貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されます

【2】資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な場合における強制換価手続(滞納処分や強制執行、担保権の実行としての競売、破産手続等)等による資産の譲渡による所得

【3】国または地方公共団体に対して財産を寄附した場合、公益を目的とする事業を行う法人に対して財産を寄附した場合(国税庁長官の承認を受けたものに限る)

【4】文化財保護法により指定されている重要文化財(土地を除く)を、国等(国、独立行政法人国立文化財機構、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立科学博物館、地方公共団体または一定の地方独立行政法人など)に譲渡した場合の所得

【5】相続税の納付のため財産を物納に充てた場合(超過物納額については譲渡所得の課税対象となります)

譲渡所得の金額の計算

【1】課税方法の区分
・・・課税される譲渡所得のうち、売った資産の種類に応じて総合課税と分離課税に区分され、税金の計算方法が異なります
(1)総合課税の譲渡所得
□ 土地や建物、株式等を売った場合を除き、資産を売ったときの譲渡所得は、給与所得や事業所得などの所得と合算され、総合課税により超過累進税率を使って税金を計算します
□ 金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、ゴルフ会員権、特許権、著作権、土石(砂)、事業用車両、少額減価償却資産や一括償却資産のうち業務の性質上重要な資産などを売った場合は総合課税の対象となります
(2)分離課税の譲渡所得
□ 土地、借地権や建物を売ったときの譲渡所得は、事業所得や給与所得などの所得と区別され、総合課税ではなく分離課税により特定の税率を使って税金を計算します

【2】短期譲渡所得と長期譲渡所得の区分
・・・売った資産の所有期間の長短により、譲渡所得を大きく分類します
(1)総合課税の譲渡所得
□ 総合課税における短期と長期の判定は、所有期間により区分します
 ①所有期間が5年以内の場合・・・短期譲渡所得
 ②所有期間が5年を超えている場合・・・長期譲渡所得
□ 所有期間5年以内とは、取得の日以後5年以内にされたもの(=取得の日の5年後の応当日の前日までにされたもの)をいいます
□ 例外的として、自分が研究して取得した特許権や実用新案権などの工業所有権や、自分が著作した著作権などは、所有期間が5年以内の場合でも長期譲渡所得となります
□ 総合課税の対象とされる譲渡がその年に複数回あった場合は、短期と長期の区分毎に合計し、総合短期譲渡所得と総合長期譲渡所得に分類します
(2)分離課税の譲渡所得
□ 土地や建物を売ったときの分離課税における短期と長期の判定は、譲渡した年の1月1日における所有期間により区分し、税金も別々に計算します
。なお、所有期間とは、土地や建物の取得の日の翌日から引き続き所有していた期間をいいます
□ 所有期間が譲渡した年の1月1日において5年以下の場合・・・短期譲渡所得
□ 所有期間が譲渡した年の1月1日において5年を超える場合・・・長期譲渡所得
□ 売った資産が相続や贈与により取得したものである場合は、本人の所有期間によらず、原則として被相続人や贈与者の取得した日から所有期間を計算(=取得時期を引き継ぎ)します
□ 分離課税の対象とされる譲渡がその年に複数回あった場合は、短期と長期の区分毎に合計し、分離短期譲渡所得と分離長期譲渡所得に分類します

【3】譲渡所得の金額の計算
(1)総合課税の譲渡所得
□ 総合課税の譲渡所得金額の計算にあたっては、譲渡益(=譲渡価額-(取得費+譲渡費用))の合計額から特別控除額50万円を控除することができます。この特別控除額50万円は特例ではないため、その年の総合課税の譲渡所得の計算上、必ず控除することができます
□ 譲渡益の合計額が50万円以下の場合の特別控除額は譲渡益の合計額が限度となります。譲渡益の合計額から50万円を控除してマイナスになることはありません。また、譲渡益ではなく譲渡損(譲渡価額<(取得費+譲渡費用))の場合は、特別控除額を控除することはできません
□ 譲渡所得の特別控除額は、その年を通じて50万円が限度となります。仮に、その年に複数回の短期と長期の譲渡益がある場合は、短期と長期の譲渡益の合計額に対して50万円が限度です。なお、この場合の控除順序は、先に短期の譲渡益から控除します
□ 総合課税の譲渡所得金額は以下のように計算し、短期譲渡所得の金額はその全額が、長期譲渡所得の金額はその1/2がそれぞれ総合課税の対象となります

【計算式】総合短期譲渡所得金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円
【計算式】総合長期譲渡所得金額=(総収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円)×1/2


□ 取得費とは、一般に購入代金(購入手数料や設備費、改良費などを含む=取得価額ともいいます)をいいます。ただし、使用または期間が経過することによって減価する資産については、償却費相当額を控除した後の金額となります。例えば、事業用車両を売った場合の取得費は、貸借対照表に記載される期末残高(=帳簿価額)となります
□ 譲渡費用とは、売るために直接かかった費用をいいます
(2)分離課税の譲渡所得
□ 分離課税の譲渡所得金額は以下のように計算します。なお、総合課税のように譲渡益の合計額から特別控除額50万円を控除することはできませんが、収用や居住用財産を譲渡した場合など一定の譲渡益に対する税金の計算にあたっては、特例による特別控除額が設けられています

【計算式】分離課税の譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)

□ 分離課税の譲渡所得金額の計算方法に、短期と長期に差はありません。税率に差があります
□ 取得費とは、売った土地や建物の購入代金(購入手数料や改良費、設備費などを含む=取得価額ともいいます)をいいます。ただし、建物の取得費は、所有期間中の償却費相当額を控除した後の金額となります。また、土地や建物の取得費が不明であり、または実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(=概算取得費といいます)とすることができます
□ 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などが該当します

譲渡の日と取得の日

・・・分離課税の譲渡所得については、所有期間が短期か長期かにより税率が異なることから、その所有期間における取得の日と譲渡の日の判断が欠かせません。なお、この判断は総合課税の譲渡所得においても同様に行います

【1】譲渡の日(=収入計上時期)の判断
□ 譲渡の日とは、譲渡所得の収入計上時期であり、譲渡所得を申告する年分を判断します
□ 譲渡の日とは、原則として、資産の引き渡しがあった日をいいます。ただし、特例として、売買契約の効力発生日とすることもできます

【2】取得の日(=取得時期)の判断
□ 取得の日とは、資産の取得時期であり、所有期間の判定の基となる日をいいます
□ 取得時期の原則は、今回売った土地や建物を実際に購入した日となります。また、売った資産が相続や贈与により取得したものである場合は、原則として、被相続人や贈与者の取得した日(=取得時期)を引き継ぎます。例えば、今回売った土地は3年前に父から相続したものだが、元々は50年前に祖父が取得した土地を父が20年前に相続したものであったという場合、取得時期は相続があった3年前または20年前ではなく、50年前(=祖父の取得時期)となります。この考え方は相続に限らず贈与でも同様です
□ 取得時期の例外として、今回売った土地や建物が税法上の交換や買換え等の特例を受けて取得したものである場合は、買換え等のために譲渡した資産の取得時期となります。これらの特例を受けて取得した土地や建物を今回売った場合は、この特例を受けるために譲渡した資産の取得の日から所有期間を計算します。例えば、今回売ったB土地は10年前に取得したものであるが、それは元々25年間所有していたA土地を譲渡したことで譲渡益が発生したため、買換えの特例を受けて取得したB土地であった場合、所有期間は10年ではなく35年と考えます
<取得の日のまとめ>
□ 他から購入したもの・・・引き渡しを受けた日。ただし、特例として、売買契約の効力発生日とすることもできます
□ 他に請け負わせて建設したもの・・・引き渡しを受けた日
□ 自ら建設したもの・・・建設の完了日
□ 相続により取得したもの・・・被相続人が取得した日(限定承認を除く)
□ 贈与により取得したもの・・・贈与者が取得した日(法人からの贈与を除く)
□ 課税の繰り延べを受けて取得したもの・・・特例の内容により、譲渡資産の取得の日、または買換資産の実際の取得の日

【3】所有期間の判断
(1)分離課税の場合
□ 取得の日の翌日から譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年を超えている資産の譲渡を長期譲渡といい、それ以外を短期譲渡として区分します
□ この場合の所有期間は、譲渡資産の取得の日と譲渡の日までの間の日数を基にカウントすることはできず、あくまでも、譲渡した年(=譲渡の日の属する年)の1月1日において引き続き所有していた期間によります
(2)総合課税の場合
□ 取得の日以後5年以内にされたものによる所得を短期譲渡といい、それ以外を長期譲渡として区分します
□ この場合の所有期間は、譲渡資産の取得の日と譲渡の日までの間の日数を基にカウントします
(3)譲渡の日と取得の日の判断の相違
□ 譲渡の日と取得の日は、何れも引き渡しの日を原則としつつ、何れも売買契約の効力発生日とすることも可能です
□ 譲渡の日を引き渡しの日としつつ、取得の日は効力発生日とする判断も認められます。また、この逆の判断の組み合わせも可能です

分離課税の特別控除とその他の特例

【1】分離課税の特別控除の種類
・・・譲渡益に対して税金を計算することを原則としつつ、一定の譲渡に係る譲渡益については、税金の計算上、譲渡益を減少させる特別控除額が設けられています
□ 土地や建物を売ったときの譲渡所得の金額が一定の要件に該当する場合は、税金の計算上、特例により譲渡所得金額から特別控除額を控除することができます。特例による特別控除額には、以下の6つがあります
(1)収用等のために土地や建物が買い取られた場合・・・5,000万円
(2)居住用財産を譲渡した場合・・・3,000万円
(3)特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合・・・2,000万円
(4)特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合・・・1,500万円
(5)特定の土地等を譲渡した場合・・・1,000万円
(6)農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合・・・800万円
□ 上記(1)~(6)の特別控除額は、それぞれの特例ごとの譲渡益が限度となります
□ その年において上記(1)~(6)のうち複数の特例に該当する場合の特別控除額は、その年の譲渡益の全体を通じて合計5,000万円が限度((1)~(6)の全部適用でMAX13,300万円ではありません)となります。なお、5,000万円に達するまでの特別控除額の控除は、上記(1)~(6)の特例の順(=特別控除額の大きい順)によります
□ これらの特別控除額を控除した後の金額を、課税短期譲渡所得金額または課税長期譲渡所得金額といいます。例えば、20年住んでいた居住用財産を3,200万円で売った(取得費と譲渡費用の合計額が700万円と仮定)場合で3,000万円控除の特例が適用されるときの課税長期譲渡所得金額は0円となります
<計算例>(3,200万円-700万円=2,500万円)-2,500万円(譲渡所得を限度)=0円
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、上記の特別控除額を控除する前の譲渡益の金額で判定します

【2】居住用財産を売ったときの特例
・・・居住用財産(マイホーム)を売ったときについては、一定の要件のもと、その譲渡益および譲渡損について、以下のような税法上の特例が設けられています
□ 居住用財産を売って譲渡益が生じた場合・・・居住用財産の3,000万円の特別控除
□ 所有期間が10年を超える居住用財産を売って譲渡益が生じた場合・・・軽減税率の特例
□ 相続または遺贈により取得した被相続人の居住用財産(空き家)を売って譲渡益が生じた場合・・・被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除
□ 特定の旧居宅を売って譲渡益が生じ、代わりの新居宅を買い換えた場合・・・特定の居住用財産の買換えの特例
□ 旧居宅を売って譲渡損が生じ、代わりの新居宅を買い換えた場合・・・居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
□ 住宅ローンが残っている居住用財産を売って譲渡損が生じた場合・・・特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

【3】その他の特例
・・・分離課税の譲渡所得に対する特例として、様々な特別控除や居住用財産を売った場合の特例のほか、以下のような(譲渡益に対する)課税の繰り延べや、交換により譲渡益がなかったものとみなす特例が設けられています
□ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
□ 特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例
□ 固定資産の交換の場合の課税の特例
□ 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

税額の計算(税率)

・・・売った資産の所有期間の長短により、または総合課税と分離課税の区分により、課税される金額や税率が異なります

【1】総合課税の譲渡所得金額に対する税額(税率)
□ 総合課税の譲渡所得に対して特定の税率はありません。給与所得や不動産所得などと合算され、超過累進税率により税金を計算します
□ 例えば、8年所有で帳簿価額が60万円の事業用車両を130万円で売った場合は、10万円が超過累進税率により課税されます
<計算例>(130万円-60万円-50万円)×1/2=10万円:総合長期譲渡所得金額


【2】分離課税の譲渡所得
・・・分離課税の場合は、超過累進税率を使用せず特定の税率で税金を計算します。税率は短期と長期で異なり、短期の税率が長期の税率より大きいため、短期と長期の区分は重要となります
(1)課税短期譲渡所得金額に対する税額(税率)
□ 課税短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
□ 課税短期譲渡所得金額に対する所得税(率)は、30%となります
□ 所得税30%のほか、住民税が9%課税されるため、結果、課税短期譲渡所得金額に対しては、所得税と住民税の合計で39%の税金が課税されます
□ 例えば、課税短期譲渡所得金額が600万円の場合は、合計で234万円の税金が課税されます(所得税については、このほか2.1%の復興特別所得税が課税されますが、計算は省略)
<計算例>所得税180万円(600万円×30%)+住民税54万円(600万円×9%)=234万円
(2)課税長期譲渡所得金額に対する税額(税率)
□ 課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
□ 課税長期譲渡所得金額に対する所得税(率)は、15%となります
□ 所得税15%のほか、住民税が5%課税されるため、結果、課税長期譲渡所得金額に対しては、所得税と住民税の合計で20%の税金が課税されます
□ 例えば、課税長期譲渡所得金額が900万円の場合は、合計で180万円の税金が課税されます(所得税については、このほか2.1%の復興特別所得税が課税されますが、計算は省略)
<計算例>所得税135万円(900万円×15%)+住民税45万円(900万円×5%)=180万円

譲渡価額と取得費と譲渡費用

【1】譲渡価額
(1)譲渡価額の原則
□ 譲渡所得を計算するには、その資産の移転が譲渡所得として課税されるものかどうかの判断から始まります。譲渡所得以外の所得となるものや、相続税、贈与税の対象となる場合は譲渡所得に該当しません
□ その資産の移転が譲渡所得として課税されるものである場合は、譲渡所得の収入金額(=譲渡価額)を把握することが必要です。売買であれば売却代金、代物弁済であれば消滅した債務の額など譲渡の態様により異なります
□ 譲渡した年において売却代金の全部または一部が未収となっていても、未収金を含む全額が譲渡価額となります
□ 譲渡価額は一般的に売却代金をいいますが、譲渡所得の起因となる譲渡の範囲が有償であるか無償であるかを問わないため、みなし譲渡課税の適用の可否も注意が必要です
(2)確定申告にあたってのその他の注意点
□ 不動産を譲渡した場合に未経過固定資産税の精算金を受け取っている場合は、収入金額となります
□ 売買契約書に契約金額に応じた収入印紙が貼付されていることを確認して下さい
□ 一の契約により譲渡した資産のうちに短期所有と長期所有の資産がある場合は、収入金額の合計額を譲渡時の時価の比で按分します

【2】取得費
・・・売った資産の取得費に該当するか否か、または取得費が幾らになるかで譲渡益の計算は大きく左右され、結果、税金の計算に影響することから、取得費の判断は重要となります。なお、取得費の算定にあたっては、取得価額との違いから、減価しない資産と減価する資産の別による計算方法の違いを確認して下さい
(1)取得価額と取得費の違い
□ 取得費を算定するには、取得価額を把握するところから始まります
□ 取得価額とは、取得に用した金額と、設備費と、改良費の合計額(=取得に用した金額+設備費+改良費)をいいます
□ 取得に用した金額とは、最初に資産を取得する際に支出した金額をいいます
□ 設備費とは、資産を取得後に支出した金額のうち、基礎工事費や据付費、試運転費などの設備費用をいいます
□ 改良費とは、資産を取得後に支出した金額のうち、建物の避難階段取付費や、機械装置の部分品の取替費用など、資産の能力や能率を高めるための改良費用をいいます
□ 取得価額は取得のために支出した金額の合計であり、取得費は未償却残高ともいい、譲渡所得の金額の計算上控除するために取得価額を調整したものとなります
(2)減価しない資産の取得費
□ 減価しない資産とは、使用または期間の経過により価値が減少しない資産をいい、土地や借地権などが該当します。なお、これらの取得費は取得価額と一致します
□ 取得費=取得価額となります
(3)減価する資産の取得費
□ 減価する資産とは、使用または期間の経過により価値が減少する資産をいい、建物や機械装置などが該当します。なお、これらの取得費は取得価額から償却費相当額を控除して計算します
□ 取得費=取得価額-取得日から譲渡日までの償却費相当額となります
□ 償却費相当額は、その資産が業務の用に供されていた期間における減価償却累計額、およびその資産が業務の用に供されていなかった期間における減価の額の合計額をいいます
□ 減価の額は、【取得価額×0.9×償却率×経過年数】の旧定額法に準じた計算式で算出しますが、この場合の償却率は同種の減価償却資産の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満切捨)により、経過年数は非業務供用期間の年数(6月未満切捨、6月以上切上)によります。なお、この計算式により算出された金額は取得価額の95%を限度とします(=結果、5%の取得費を確保)
(4)取得費となるものの例示
・・・取得費は、上記(1)による売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料、設備費や改良費のほか、以下のものが含まれます。ただし、不動産所得や事業所得などの必要経費に算入されたもの(=資産計上されなかったもの)は取得費に含みません
□ 非業務用である土地や建物を購入(贈与、相続または遺贈による取得を含む)したときに納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税
□ 借主を立ち退かせるために支払った立退料(借主がいる土地や建物の購入の際)
□ 土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
□ 土地の取得に際して支払った土地の測量費
□ 建物付の土地を購入後おおむね1年以内にその建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊し費用
□ 土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
□ 既に締結されている資産の購入契約を解除し、他の資産を取得することとした場合に支出する違約金
(5)概算取得費の採用
□ 取得費は、実額で計算することが原則であり、購入当時の契約書や領収書で確認する必要があります。ただし、相続で取得した先祖伝来の土地のように購入時期が古いため取得費がわからない場合や、単純に実際の購入金額が分からない(=分かる書類がない)場合には、譲渡価額の5%を取得費とすることができます。この5%で計算した金額を概算取得費といいます
<計算例>土地を2,000万円で売った場合に取得費が不明のときは、5%相当額である100万円を取得費とすることができます
□ また、概算取得費の応用で、実際の取得費と概算取得費の何れか多い金額を取得費とすることができます。例えば、前述計算例で仮に土地の取得費が70万円と判明している場合でも、実際の70万円ではなく概算取得費である100万円を取得費とすることができます
□ 概算取得費の適用はその譲渡資産の取得費の全体に及ぶため、例えば、土地の造成費が判明しているものについて、概算取得費にその実際の造成費を上乗せすることはできません
□ 実際の取得費が分からない場合の概算取得費の採用は強制ではありません。あくまでもできる規定であり、採用は納税者の判断に委ねられます。購入当時の売買契約書がないからといって安易に概算取得費を採用するのではなく、当時の記録や資金の調達状況、間接的な書類を精査し、適正な取得費を算定することが重要です
□ 市街地価格指数による取得費の算定や、建物の標準的な建築価額表(国税庁HP/平成28年分譲渡所得の申告のしかた(記載例):抜粋)を活用することも検討しましょう
(6)相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
□ この特例は、相続または遺贈により取得した土地や建物などを、一定の期間内に譲渡した場合は、相続税額のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです
□ この特例を受けるための要件は、以下の①~③となります。なお、この特例を受けるための手続きとして、一定の計算明細書を添付した確定申告書を提出することが必要です
 ①相続または遺贈により財産を取得した者であること
 ②その財産を取得した者に相続税が課税されていること
 ③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
□ 取得費に加算する相続税額は、以下の算式により、譲渡した財産ごとに計算した金額(その者の相続税額のうちその者の債務控除前の課税価格に占める譲渡した資産の課税価格の割合)となります
□ 算出された金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額を限度とします。この特例の適用(=譲渡益-取得費加算額)により譲渡損となることはありません

【計算式:平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得した財産を譲渡した場合】
取得費に加算する相続税額=その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額÷(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)

□ 相続財産を譲渡した場合の相続税額の取得費加算の特例チェックシート・措法39条(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

【3】譲渡費用
・・・取得費の判定と同様に、譲渡所得の計算上控除できる譲渡費用に該当するか否か、または譲渡費用が幾らになるかで譲渡益の計算は大きく左右され、結果、税金の計算に影響することから、譲渡費用の判断は重要となります
(1)譲渡費用の原則
□ 譲渡費用とは、資産を譲渡するために要した費用をいいますが、売る際に支払った費用が全て譲渡費用になるとは限りません。譲渡のために直接要すること、または譲渡価額を増加させる要素が求められます
□ 譲渡価額を増加させるために支出した費用も譲渡費用とされます。これは、より多くの所得を得るためには、譲渡者の努力や手腕は必要であり、これらにより寄与したと認められる費用は譲渡所得に対応すると考えるためです
□ 一の契約により譲渡した資産のうちに短期所有と長期所有の資産がある場合の譲渡費用は、譲渡時の時価の比で按分した収入金額の比で按分します
(2)譲渡費用となるものの例示
□ 土地や建物を売るために支払った仲介手数料、運搬費、登記費用
□ 売買契約書に貼付した印紙税で売主が負担したもの
□ 貸家を売るために借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
□ 土地(借地権を含む)を売るために、その土地の上にある建物を取り壊したときの取壊し費用およびその建物の資産損失相当額
□ 既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に売却するため当該契約を解除したことに伴い支出した違約金
□ 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料
(3)譲渡費用とならないものの例示
□ 修繕費や固定資産税など資産を売るまでの維持管理のためにかかった費用
□ 建物を売った場合の引越費用
□ 売却代金を取り立てるために支払った費用
□ 土地を売った際に支払った住所変更登記や抵当権の抹消登記に係る費用

譲渡損が生じた場合の取り扱い

・・・資産を売ったことで譲渡損が生じた場合は、売った資産の種類に応じてその取り扱いは異なります。なお、この取り扱いにおいても短期と長期の区分(それぞれの合計額の把握)が前提となります

【1】総合課税の譲渡所得
□ 短期の譲渡損が複数ある場合は、短期の譲渡損の合計額を把握します
□ 短期の譲渡損は短期の譲渡益から差し引いて(=控除して、通算して)短期の譲渡益または譲渡損を把握します。この差し引く取り扱いを内部通算(または便宜上、損益通算)と表現します
□ 長期の譲渡損が複数ある場合は、長期の譲渡損の合計額を把握します
□ 長期の譲渡損は長期の譲渡益から差し引いて、長期の譲渡益または譲渡損を把握します
□ 短期の譲渡損は長期の譲渡益から差し引いて、長期の譲渡益または短期の譲渡損を把握します。なお、長期の譲渡益となった場合は、その1/2を他の所得と合算し、超過累進税率を適用します
□ 長期の譲渡損は短期の譲渡益から差し引いて短期の譲渡益または長期の譲渡損を把握します
□ 上記の通算後に短期の譲渡損または長期の譲渡損となった場合は、この譲渡損を一時所得の金額(1/2前)から差し引くことができます。なお、短期も長期も譲渡損がある場合は、短期の譲渡損を先に通算します
□ 結果、総合課税の譲渡損は、他の総合課税の金額に影響します

【2】分離課税の譲渡所得
□ 土地または建物を売って生じた譲渡損は、他の土地または建物に係る譲渡益から差し引く(=控除する、通算する)ことができます。この取り扱いを総合課税と同様に内部通算(または便宜上、損益通算)と表現します。なお、短期と長期を通算する考え方も総合課税と同様です
□ 控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算をすることはできません。結果、原則として分離課税の譲渡損は分離課税の範囲内で調整され、他の所得金額に影響しません
□ 特例として、居住用財産を譲渡したことで生じた長期の譲渡損については、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡をした年の事業所得や給与所得など他の所得と損益通算をすることができ、更に、これらの通算をしてもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます

みなし譲渡の取り扱い

・・・山林または譲渡所得の基因となる資産の移転のうち一定のものについては、その移転事由が生じたときに、その資産の時価を収入金額として譲渡所得が課税されます。この場合、移転先が法人または個人かの別により取り扱いが異なります

【1】移転先が法人(=個人→法人)の場合
□ 贈与、遺贈、時価の1/2未満の対価による譲渡(=低額譲渡)があった場合は、売主である個人に対して時価による譲渡課税がされます
□ 法人に対し一の契約により2以上の資産を譲渡した場合の低額譲渡の1/2判定は、譲渡したすべての資産(たな卸資産を除く)の合計額によります
□ 法人に対する負担付贈与があった場合は、贈与ではなく低額譲渡に該当するかどうかで判定します。このとき、法人の負担する債務が贈与により移転した資産の時価の1/2未満であれば時価課税となります
□ 時価の1/2以上の対価による譲渡があった場合は、通常の譲渡課税となります

【2】移転先が個人(=個人→個人)の場合
□ 限定承認による相続があった場合は、売主である個人に対して時価による譲渡課税がされます
□ 贈与、単純承認による相続があった場合は、贈与税または相続税の課税対象となり、譲渡課税の対象となりません
□ 時価の1/2未満の対価による譲渡(=低額譲渡)があり譲渡損となった場合は、その譲渡損はなかったものとみなされます。この場合、移転先の個人においては売主である個人の取得費および取得時期を引き継ぎます
□ 時価の1/2未満の対価による譲渡(=低額譲渡)があり譲渡益となった場合や、時価の1/2以上の対価による譲渡があった場合は、通常の譲渡課税となります

譲渡所得として課税される部分のイメージ図

【1】基本的な譲渡の場合
□ 譲渡価額と譲渡資産の取得費・譲渡費用を比較し譲渡損益を計算。譲渡益=課税される部分となります
□ 原則、譲渡益の金額が配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定対象となります

<基本的な譲渡のイメージ【図1】>
 

【2】特別控除を適用した場合
□ 譲渡益を原則どおりに計算後、譲渡益から特別控除額を控除した金額が、課税される部分となります
□ 特別控除額を控除する前の譲渡益の金額が、配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定対象となります

<特別控除の特例のイメージ【図2】>
 

【3】買換えの特例を適用した場合
(1)課税される部分の判定
□ 譲渡益を原則どおりに計算後、課税される部分を計算するため、譲渡価額と買換資産の取得価額を比較します
□ 譲渡益のうち買換資産の取得価額を超える譲渡価額に対応する部分が、課税される部分となります。課税の繰り延べの特例は収用、居住用財産、事業用資産など様々ありますが、原則的に以下と同様の考え方で判定します
□ 譲渡価額≦買換資産の取得価額の場合
・・・譲渡なしとされ、税金は課税されません
□ 譲渡価額>買換資産の取得価額の場合
・・・買換資産の取得価額を超える部分について譲渡ありとされ、税金が課税されます
 ①収入金額・・・譲渡価額-買換資産の取得価額
 ②取得費+譲渡費用・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(①÷譲渡価額)
 ③課税される譲渡所得金額・・・①-②
□ 譲渡益のうち課税される部分の金額が、配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定対象となります
□ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例においては、上記の買換資産を代替資産と、譲渡価額を補償金とそれぞれ読み替えます。なお、この場合の補償金とは、対価補償金から譲渡費用(譲渡費用を補てんするための補償金を受け取っている場合は、その補償金で補てんされた後の残額)を控除した金額をいい、譲渡費用は収入金額のマイナス項目と捉えます

(2)買換資産等に付すべき取得価額の判定
□ 買換資産や代替資産の取得による課税の繰り延べの適用を受けた場合は、必ず買換資産や代替資産の取得価額を調整しなければなりません。特定の事業用資産の買換え特例や固定資産の交換特例も、同様の考え方によります。調整後の買換資産等に付すべき取得価額の原則的な考え方は、以下のとおりとなります
□ 譲渡価額=買換資産の取得価額の場合
・・・譲渡資産の取得費+譲渡費用を引き継ぐ
□ 譲渡価額<買換資産の取得価額の場合
・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)+(買換資産の取得価額-譲渡価額)
□ 譲渡価額>買換資産の取得価額の場合

・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(買換資産の取得価額÷譲渡価額)

<課税の繰り延べのイメージ【図3の1】【図3の2】>

居住用財産の3,000万円の特別控除

【1】概要
□ 居住用財産を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例となります
□ 特別控除は、所有期間の長短は要件ではなく(=短期譲渡および長期譲渡にかかわらず)控除できます。また、居住期間の長短も要件となりません
□ 短期譲渡と長期譲渡がある年については、その年を通じて3,000万円を限度とし、控除順序は、短期譲渡から先に控除します
□ 原則、ご自身が所有者として居住している家屋を譲渡することが要件であり、その敷地は家屋と共に譲渡することが必要となります。また、被相続人の空き家の特例については別の取り扱いとなり、同じ3,000万円控除の特例であっても、誰の居住用であるかの区別が必要です
□ その年に自己の居住用家屋の特例と空き家の特例があった場合は特例の併用が可能です。ただし、特別控除額は両方で3,000万円が限度となります
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、3,000万円の特別控除額を控除する前の譲渡益の金額で判定します

【2】特例を受けるための譲渡の要件
(1)譲渡時まで居住している場合
□ 現にご自身が居住している家屋の譲渡であること
□ 現にご自身が居住している家屋と共にするその敷地の譲渡であること
(2)過去に居住していた場合
□ 災害により滅失した家屋については、その敷地を居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年(=3年目の年)の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません
□ 過去に居住していた家屋や敷地については、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません
□ 居住用家屋を取り壊した場合は、その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日までに、その敷地を貸し付けその他の用に供していないことも要件となります
(3)現にご自身が居住している家屋の判定
□ ご自身の現に住んでいる家屋が2以上ある場合は、このうちご自身が主として住んでいる一の家屋に限り特例の対象となります
□ ご自身が現に住んでいない家屋であっても、転勤や転地療養等のため配偶者等を残して離れて暮らしている場合や、自分が住まなくなった後残された生計一親族が引き続き住んでいるなど一定の場合には、ご自身が居住している家屋に該当するものとして取り扱われます

【3】適用除外
□ 譲渡年において、収用交換等の課税の特例や固定資産の交換特例など一定の特例の適用を受ける場合
□ 譲渡した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けている場合や、居住用財産の買換えや譲渡損失についての損益通算および繰越控除など一定の特例の適用を受けている場合
□ 配偶者や直系血族、生計一親族など特定の関係がある者に対する譲渡
□ この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋や、居住用家屋を新築する期間中だけの仮住まいのほか、別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋の譲渡

【4】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書(一定の場合における添付書類を含む)を提出することが必要です
□ 
居住用の家屋や敷地(居住用財産)を売却した場合の特例チェックシート(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート

【5】居住用財産が共有の場合
□ この特例の適用にあたり共有の居住用財産を譲渡した場合は、共有者ごとに適用の判定をします
□ 共有者全員の譲渡所得に対し3,000万円が限度になるのではなく、共有者1人につき最高3,000万円となります。結果、例えば2人で共有する居住用財産の譲渡所得がこの特例の適用要件を満たすのであれば、最高6,000万円の特別控除となります
□ この特例を受けるためには確定申告をすることが必要ですが、共有者それぞれが提出しなければなりません
□ 家屋は単独所有で敷地だけが共有の場合は、原則として、家屋の所有者以外の者はこの特例を受けることはできませんが、以下の【6】を参照して下さい

【6】家屋と敷地の所有者が異なる場合
□ この特例は、家屋の所有者が家屋と共にその敷地を譲渡した場合に適用を受けることができるものであるため、原則として、家屋の所有者と敷地の所有者が異なる場合は、敷地の所有者は特例の対象となりません。ただし、以下の(1)~(3)のすべてに該当するときは、敷地の所有者もこの特例を受けることができます
(1)敷地を家屋と同時に譲渡すること
(2)家屋の所有者と敷地の所有者とが親族関係にあり、生計を一にしていること
(3)敷地の所有者は、その家屋の所有者と共にその家屋を居住の用に供していること
□ この場合の特別控除額は、家屋の所有者と敷地の所有者と合計で3,000万円が限度となります。また、特別控除額を控除するにあたっては、先に家屋の所有者から控除し、残額に対して敷地の所有者から控除します。結果、敷地の所有者が控除できる特別控除額は、3,000万円から家屋の所有者が受ける特別控除額を差し引いた残額となります
□ 家屋と敷地の所有者が異なる状況としては、家屋は単独所有で敷地だけが共有の場合や、家屋も敷地もそれぞれが単独所有の場合、家屋は共有で敷地は別な単独所有の場合が考えられます
<計算例>家屋は夫の単独所有で、敷地は妻の単独所有である居住用財産を譲渡し、その譲渡益が家屋(分離短期)2,000万円と敷地(分離長期2,500万円)であった場合で、ご夫婦が特例の適用要件を満たしている場合の各人の特別控除額は、以下の①および②となります
 ①夫:家屋・・・2,000万円 → 分離短期0円(=2,000万円-2,000万円)
 ②妻:敷地・・・1,000万円(=3,000万円-①) → 分離長期1,500万円(=2,500万円-1,000万円)

【7】店舗併用住宅を譲渡した場合
□ 家屋が居住用と店舗用(非居住用)など2以上の用途からなる店舗併用住宅の場合についても、この特別控除の特例を受けることができます
□ 特例の対象は、店舗併用住宅のうちご自身の居住の用に供している部分(面積)に限られます。なお、居住の用に供している部分が全体の90%以上(=非居住用10%以下)であるときは、全体を居住の用に供しているものとしてこの特例を受けることができます
□ 家屋や敷地の併用部分うち居住の用に供している部分の判定は、家屋の床面積の割合を参考に計算します

所有期間が10年を超える場合の軽減税率の特例

【1】概要
□ 居住用財産の長期譲渡所得についてその所有期間が10年を超える場合は、一般の場合より低い税率で税金を計算することができる特例となります
□ 軽減税率は、居住用財産の3,000万円の特別控除と重ねて適用することができます
□ 所有期間が、譲渡をした年の1月1日において10年を超えていることの判定が重要です。なお、居住期間の長短は要件となりません
□ この特例の対象となる居住用の家屋と敷地の考え方は、居住用財産の3,000万円の特別控除と同様です

【2】軽減税率
□ 特別控除後の長期譲渡所得金額を課税長期譲渡所得金額といい、この課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分が10%、超える部分が15%により税金が計算されます。なお、税率の区分は特別控除適用後の金額で判定します
<所得税の計算式(税率)>
(1)6,000万円以下・・・課税長期譲渡所得金額×10%
(2)6,000万円超・・・(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×15%+600万円
□ 課税長期譲渡所得金額に対しては、所得税のほか住民税が課税されます。この場合、軽減税率の特例は住民税の計算においても6,000万円以下か超えるかで税率が区分されます
<住民税の計算式(税率)>
(1)6,000万円以下・・・課税長期譲渡所得金額×4%
(2)6,000万円超・・・(課税長期譲渡所得金額-6,000万円)×5%+240万円

【3】特例を受けるための譲渡の要件
□ 現にご自身が居住している家屋で、譲渡をした年の1月1日において所有期間が10年を超えるものの譲渡であること
□ 現にご自身が居住している家屋と共にするその敷地の譲渡であること。この場合、家屋と敷地の両方の所有期間が、譲渡をした年の1月1日において10年を超えていることが必要です
□ 災害により滅失した家屋については、その敷地を居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年(=3年目の年)の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません。また、その敷地は、滅失した家屋を引き続き所有していたとしたならば、譲渡をした年の1月1日において所有期間が10年を超える家屋の敷地であることも必要です
□ 過去に居住していた家屋や敷地で所有期間が譲渡をした年の1月1日において10年を超えるものについては、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません
□ 居住用家屋を取り壊した場合は、その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、所有期間が取り壊した日の属する年の1月1日において10年を超える家屋であり、その家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日までに、その敷地を貸し付けその他の用に供していないことも要件となります

【4】適用除外
□ 譲渡した年の前年および前々年にこの特例の適用を受けている場合や、居住用財産の買換えや交換の特例などの適用を受けている場合
□ 配偶者や直系血族、生計一親族など特定の関係がある者に対する譲渡

【5】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です
□ 居住用の家屋や敷地(居住用財産)を売却した場合の特例チェックシート(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除

【1】概要
□ 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例となります
□ この特例は被相続人が1人で居住していた家屋(=被相続人居住用家屋といいます)で、現在は空き家となっているものの譲渡益についての特例であり、自己の居住用家屋の特例については別の取り扱いとなります。同じ3,000万円控除の特例であっても、誰の居住用であるかの区別が必要です
□ その年に自己の居住用家屋の特例と空き家の特例があった場合は特例の併用が可能です。ただし、特別控除額は両方で3,000万円が限度となります
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、3,000万円の特別控除額を控除する前の譲渡益の金額で判定します

【2】特例を受けるための適用要件
□ 売った者が相続または遺贈により、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと
□ 被相続人居住用家屋とは、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、以下の(1)~(3)の要件のすべてに該当するもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る)をいいます
(1)昭和56年5月31日以前に建築されたこと
(2)区分所有建物登記がされている建物ではないこと
(3)相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと
□ 被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます
□ 相続開始の直前において、その土地が、母屋と離れなど用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地であった場合は、母屋の床面積に対応する部分のみが特例の対象となるように、一定の調整が必要となります
□ この特例を受けようとする者は、被相続人居住用家屋に係る他の相続人等に対して一定の事項を通知しなければなりません

【3】特例を受けるための譲渡の要件
・・・相続開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することのほか、空き家のまま譲渡した場合と、取り壊して譲渡した場合に応じて要件が異なります
(1)空き家のまま譲渡した場合
□ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の譲渡であること
□ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋と共にする被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡であること
□ これらの家屋または敷地等については、譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであることや、相続開始の時から譲渡の時までの間に事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがない(=空き家である)ことも要件となります
(2)取り壊して譲渡した場合
□ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部を取壊し等した後の、被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡であること
□ 被相続人居住用家屋は、相続開始の時から取壊し等の時までの間に、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがない(=空き家である)こと
□ 被相続人居住用家屋の敷地等は、相続開始の時から譲渡の時までの間に事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと、および取壊し等の時から譲渡の時までの間に建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないことも要件です

【4】適用除外
□ 譲渡代金が1億円を超える場合
□ 譲渡した家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けている場合
□ 同一の被相続人から相続または遺贈により取得した、被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けている場合
□ 配偶者や直系血族、生計一親族など特定の関係がある者に対する譲渡

【5】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に譲渡した資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた『被相続人居住用家屋等確認書』のほか、一定の書類を添付して提出することが必要です。なお、空き家のまま譲渡した場合と、取り壊して譲渡した場合に応じて添付書類が異なります
□ 被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例チェックシート・措法35条3項(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

・・・旧居宅を譲渡し、新居宅をローンで取得した場合の特例です。分離課税の譲渡損は、原則として給与所得や事業所得など他の所得と損益通算はできませんが、居住用財産の譲渡損については2つの特例が設けられており、他の特例である『特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例(措法41の5の2)』との使い分けが必要です

【1】概要
□ 居住用財産を売って生じた譲渡損のうち、一定の要件を満たす場合は、その年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができ、さらに、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損を、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます
<計算例>旧居宅の譲渡損が1,000万円で他に給与所得が800万円ある場合、譲渡損と給与所得を損益通算することができ、さらに控除しきれない200万円については、翌年以後3年内に繰り越すことができます(例えば翌年の給与所得が850万円であれば▲200万→650万となります)
□ この特例により買換えた新居宅については、住宅借入金等特別控除の適用が可能です
□ 被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用を受けている場合でも、この特例を適用することができます

【2】特例を受けるための譲渡資産(旧居宅)の要件
□ 現にご自身が居住している所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超える家屋で国内にあるものの譲渡であること
□ 現にご自身が居住している家屋と共にするその敷地の譲渡であること。この場合、家屋と敷地の両方の所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超えていることが必要です
□ 災害により滅失した家屋については、その敷地を居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年(=3年目の年)の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません。また、その敷地は滅失した家屋を引き続き所有していたとしたならば、譲渡をした年の1月1日において所有期間が5年を超える家屋の敷地であることも必要です
□ 過去に居住していた家屋や敷地で所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超えるものについては、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
□ 居住用家屋を取り壊した場合は、その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、所有期間が取り壊した日の属する年の1月1日において5年を超える家屋であり、その家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日までに、その敷地を貸し付けその他の用に供していないことも要件となります
□ 旧居宅に係る住宅ローンの有無は適用の要件ではありません

【3】特例を受けるための買換資産(新居宅)の要件
□ 譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の翌年12月31日までの間に、国内にある買換資産でその居住用部分の床面積が50㎡以上であるものを取得すること
□ 買換資産を取得した年の翌年12月31日までの間に、居住の用に供することまたは供する見込みであること
□ 買換資産を取得した年の12月31日において、買換資産に係る償還期間が10年以上の住宅ローンを有すること

【4】繰越控除の適用除外
□ 旧居宅の敷地の面積が500㎡を超える場合(この場合は500㎡を超える部分に対応する譲渡損失の金額について適用できません)
□ 繰越控除を適用する年の12月31日において、新居宅に係る償還期間が10年以上の住宅ローンがない場合
□ 合計所得金額が3,000万円を超える場合(その超える年のみ適用できません)

【5】損益通算および繰越控除の適用除外
□ 旧居宅の売主と買主が、配偶者や直系血族、生計一親族など特定の関係にある場合
□ 旧居宅を譲渡した年の前年および前々年において、居住用財産の譲渡所得に係る一定の特例を受けている場合
□ 旧居宅を譲渡した年またはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受ける場合または受けている場合
□ 譲渡の年の前年以前3年内の年において生じた他の居住用財産の譲渡損失について、居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の特例を受けている場合

【6】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です。なお、損益通算と繰越控除に応じて添付書類が異なります
□ 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例チェックシート・措法41条の5(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

・・・旧居宅に住宅ローンが残っており、その住宅ローン残高に満たない金額で譲渡した場合の特例です。分離課税の譲渡損は、原則として給与所得や事業所得など他の所得と損益通算はできませんが、居住用財産の譲渡損については2つの特例が設けられており、他の特例である『居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例(措法41の5)』との使い分けが必要です

【1】概要
□ 居住用財産を売って生じた譲渡損のうち、一定の要件を満たす場合は、その年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができ、さらに、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損を、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます
□ この特例を受けた場合でも、新居宅について住宅借入金等特別控除の適用は可能です
□ 被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用を受けている場合でも、この特例を適用することができます

【2】特例を受けるための譲渡資産(旧居宅)の要件
□ 現にご自身が居住している所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超える家屋で国内にあるものの譲渡であること
□ 現にご自身が居住している家屋と共にするその敷地の譲渡であること。この場合、家屋と敷地の両方の所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超えていることが必要です
□ 災害により滅失した家屋については、その敷地を居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年(=3年目の年)の12月31日までに譲渡すること。この場合、居住しなくなった日からの用途については問いません。また、その敷地は滅失した家屋を引き続き所有していたとしたならば、譲渡をした年の1月1日において所有期間が5年を超える家屋の敷地であることも必要です
□ 過去に居住していた家屋や敷地で所有期間が譲渡をした年の1月1日において5年を超えるものについては、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
□ 居住用家屋を取り壊した場合は、その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。この場合、所有期間が取り壊した日の属する年の1月1日において5年を超える家屋であり、その家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日までに、その敷地を貸し付けその他の用に供していないことも要件となります
□ 譲渡した旧居宅の譲渡契約日の前日において、旧居宅に係る償還期間10年以上の住宅ローン残高があり、かつ、その住宅ローン残高が旧居宅の譲渡価額を超えていること

【3】特例を受けるための買換資産(新居宅)の要件
□ この特例は、旧居宅の譲渡に代わって新居宅を取得することは要件としていません。新居宅を取得しても、取得しなくても適用できます
□ この適用にあたり要件とされる住宅ローン残高は譲渡資産(旧居宅)に係る住宅ローンであり、仮に新居宅を買換えた場合でも、新居宅に係る住宅ローン残高はこの特例の適用上考慮されません

【4】繰越控除の適用除外
□ 合計所得金額が3,000万円を超える場合(その超える年のみ適用できません)

【5】損益通算および繰越控除の適用除外
□ 配偶者や直系血族、生計一親族など特定の関係にある者に譲渡した場合
□ 譲渡した年の前年および前々年において、居住用財産の譲渡所得に係る一定の特例を受けている場合
□ 譲渡した年またはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例の適用を受ける場合または受けている場合
□ 譲渡の年の前年以前3年内の年において生じた他の居住用財産の譲渡損失について、特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例を受けている場合

【6】計算例
・・・損益通算および繰越控除の対象となる譲渡損失の金額は、住宅ローン残高から譲渡価額を控除した残額が限度となります
(1)計算例その1
□ 譲渡損▲2,800万円(=譲渡価額3,000万円-取得費・譲渡費用5,800万円)、住宅ローン残高4,200万円、住宅ローン残高と譲渡価額の差額1,200万円(=4,200万円-3,000万円)のとき
□ 住宅ローン残高が譲渡価額を超えるかどうかの判定・・・4,200万円>3,000万円 ∴特例あり
□ 対象となる譲渡損失の判定・・・2,800万円>1,200万円 ∴譲渡損のうち1,200万円が損益通算可能
(2)計算例その2
□ 譲渡損▲2,800万円(=譲渡価額3,000万円-取得費・譲渡費用5,800万円)、住宅ローン残高6,100万円、住宅ローン残高と譲渡価額の差額3,100万円(=6,100万円-3,000万円)のとき
□ 住宅ローン残高が譲渡価額を超えるかどうかの判定・・・6,100万円>3,000万円 ∴特例あり
□ 対象となる譲渡損失の判定・・・2,800万円≦3,100万円 ∴譲渡損の全額2,800万円が損益通算可能
(3)計算例その3
□ 譲渡損▲2,800万円(=譲渡価額3,000万円-取得費・譲渡費用5,800万円)、住宅ローン残高1,800万円のとき
□ 住宅ローン残高が譲渡価額を超えていない(1,800万円≦3,000万円)ため特例なし

【7】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です。なお、損益通算と繰越控除に応じて添付書類が異なります
□ 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例チェックシート・措法41条の5の2(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

収用等の5,000万円控除と代替資産を取得した場合の課税の特例

・・・土地収用法や都市計画法により資産が収用等され補償金を受け取った場合については、補償金の種類に応じて所得区分が異なります。なお、その補償金が譲渡所得の収入金額(=譲渡価額)とされる場合は、5,000万円控除や代替資産の取得による課税の繰り延べの特例が設けられています

【1】補償金の種類と取り扱い
(1)交付される補償金の種類

□ 対価補償金・・・収用等された資産の対価とされるもの。なお、原則として、対価補償金だけが収用等の課税の特例の適用対象となります
□ 収益補償金・・・資産を収用等されることにより生ずる事業の減収や、損失の補てんに充てられるもの
□ 経費補償金・・・休廃業等により生ずる事業上の費用や、収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産について実現した損失の補てんに充てるもの
□ 移転補償金・・・資産の移転に要する費用の補てんに充てるもの
□ その他対価補償金の実質を有しない補償金・・・原状回復費や協力料など
(2)補償金の種類に応じた取り扱い(=所得区分)
□ 対価補償金・・・譲渡所得の金額または山林所得の金額の計算上、収入金額(=譲渡価額)とされ、収用等の課税の特例の適用があります
□ 収益補償金・・・交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額または雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します
□ 収益補償金のうち建物の収用等に対するもの・・・建物の対価補償金として交付を受けた金額が、収用等された建物の再取得価額に満たないときは、対価補償金として取り扱うことができます
□ 経費補償金のうち休廃業等により生ずる事業上の費用の補てんに充てられるもの・・・交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額、事業所得の金額または雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入します
□ 経費補償金のうち事業を廃止する場合等でその事業の機械装置等を他に転用できないとき・・・対価補償金として取り扱うことができます
□ 経費補償金のうち収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産(たな卸資産を除く)について実現した損失の補てんに充てられるもの・・・山林所得の金額または譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入します
□ 移転補償金のうち交付の目的に従って支出した場合・・・その支出した額については各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入されません
□ 移転補償金のうち交付の目的に従って支出されなかった場合または支出後に補償金が残った場合・・・一時所得の金額の計算上、総所得金額に算入されます
□ 移転補償金のうち建物等を曳き家または移築するための補償金・・・その建物等を取り壊したときは、対価補償金として取り扱うことができます
□ 移転補償金のうち移設困難な機械装置に対するもの・・・対価補償金として取り扱うことができます
□ 借家人補償金・・・対価補償金とみなして取り扱われます
□ その他対価補償金の実質を有しない補償金・・・その実態に応じ、各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入します

【2】収用交換等の5,000万円の特別控除
(1)概要

□ 対価補償金(一定の収益補償金、経費補償金、移転補償金を含む)に係る譲渡所得から、最高5,000万円まで控除できる特例となります。なお、2以上の資産が収用等された場合でも、その年を通じて5,000万円が限度となります
□ この特例は、一の買取り等の申出についてその申出があった資産を2以上の年にまたがって(=分割して)譲渡した場合は、最初の年だけしか適用できません
□ 下記【3】の収用交換等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例とは何れか選択となります
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、5,000万円の特別控除額を控除する前の譲渡益の金額で判定します
(2)特例を受けるための適用要件
□ 収用等に伴い補償金等を受け取ること
□ 収用等された資産は、土地や建物などたな卸資産等以外の資産であること
□ その年中に収用等された資産のいずれについても、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと
□ 最初に買取りの申出があった日から6ヶ月以内に収用等されること
□ 最初に買取り等の申出を受けた者(その者の死亡に伴い相続または遺贈により当該資産を取得した者を含む)が譲渡していること
(3)適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です
□ 収用等により土地などが買い取られた場合の5,000万円特別控除の特例チェックシート・措法33条の4(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

【3】収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
(1)概要

□ 対価補償金(一定の収益補償金、経費補償金、移転補償金を含む)を受け取って(=旧資産の譲渡)、代替資産(=新資産)を買い換えた(=取得した)場合は、譲渡年の譲渡益に係る課税を将来に繰り延べることができます
□ 課税を将来に繰り延べる特例であり、譲渡益に対する課税が免除されたわけではありません
□ 上記【2】の収用交換等の5,000万円の特別控除とは何れか選択となります
□ 最初に買取りの申出があった日から6ヶ月以内に収用等される必要はありません
□ この特例を受けた場合の代替資産(=新資産)の取得時期は、実際の取得時期によらず、譲渡資産の取得時期を引き継ぎます
□ この特例を受けた場合は、代替資産(=新資産)について優良賃貸住宅等の割増償却などの特例を受けることはできません
(2)特例を受けるための適用要件
□ 収用等に伴い受け取った補償金等で代替資産を取得すること
□ 収用等された資産は、土地や建物などたな卸資産等以外の資産であること
□ その年中に収用等された資産のいずれについても、収用交換等の5,000万円の特別控除の適用を受けていないこと
□ 収用等された資産について、他の課税の特例の適用を受けていないこと
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です
(3)特例を受けるための代替資産の要件
□ 原則として、収用等のあった日から2年以内に代替資産を取得すること
□ 原則として、収用等により譲渡した資産と同じ種類の資産を買い換えること。例えば、土地が収用等され代替資産として土地を取得した場合や、同様に建物と建物の場合が考えられます
□ 原則のほか、代替資産の範囲につき、一組法または事業継続法による特例もあります
□ 一組法・・・譲渡資産が種類の異なる2以上の資産で一の効用を有する一組の資産である場合は、同じ効用を有する資産をもってその譲渡資産の全てに係る代替資産とすることができます。例えば、居住用の家屋と敷地が収用等され代替資産として居住用家屋を取得した場合や、同様に店舗用、事務所用、工場用の別などが考えられます
□ 事業継続法・・・事業用資産が収用等をされた場合は、他の事業用資産を代替資産とすることができます。例えば、店舗が収用等され代替資産として事業用車両や機械装置などを取得した場合が考えられます
(4)譲渡所得の金額の計算(課税される部分の判定)
□ 補償金≦代替資産の取得価額の場合
・・・譲渡なしとされ、税金は課税されません。なお、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例において、代替資産の取得価額と比較する補償金とは、対価補償金から譲渡費用(譲渡費用を補てんするための補償金を受け取っている場合は、その補償金で補てんされた後の残額)を控除した金額をいいます
□ 補償金>代替資産の取得価額の場合
・・・代替資産の取得価額を超える補償金に対応する部分について譲渡ありとされ、税金が課税されます
 ①収入金額・・・補償金-代替資産の取得価額
 ②取得費・・・譲渡資産の取得費×(①÷補償金)
 ③課税される譲渡所得金額・・・①-②
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、補償金の額ではなく譲渡益のうち課税される部分の金額で判定します
(5)代替資産の取得価額の調整
・・・課税の繰り延べを受けた場合は、必ず代替資産の取得価額を調整しなければなりません。調整後の代替資産に付すべき取得価額は以下の①~③のとおりとなります
 ①補償金=代替資産の取得価額の場合 → 譲渡資産の取得費を引き継ぐ
 ②補償金<代替資産の取得価額の場合 → 譲渡資産の取得費+(代替資産の取得価額-補償金)
 ③補償金>代替資産の取得価額の場合 → 譲渡資産の取得費×(代替資産の取得価額÷補償金)

特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例

・・・特定の事業用資産を譲渡し他の事業用資産を取得した場合については、譲渡益の一部に係る課税を将来に繰り延べることができます

【1】概要
□ この特例では、譲渡資産である土地建物等の所在する区域に応じて、特定の買換資産を取得することが限定されますが、この譲渡資産と買換資産の限定された組み合わせは8組(=1号買換え~8号買換え)あります。※改正前は1号買換え~10号買換えの10組でした
□ ここでは、譲渡をした年の1月1日において、所有期間が10年を超えている国内にある事業用の土地等、建物または構築物を譲渡して、国内にある事業用の土地等で面積が300㎡以上で一定のもの、建物または構築物を取得する組み合わせ(=7号買換え)について記載します。※7号買換えは、改正により平成32年3月31日まで特例の適用が延長され、改正前は9号買換えでした
□ 譲渡益の一部に対して課税を将来に繰り延べる特例であり、この特例を受けても、その年の譲渡益のうち一定の金額については必ず課税されます。また、譲渡益の一部に対する課税が免除されたわけではありません
□ 譲渡益のうち課税される金額ついては、譲渡価額と買換資産の取得価額を比較し何れか少ない金額を基に計算されますが、最低20%は課税(=最大80%が課税の繰り延べ)されることになります。下記【5】譲渡所得の金額の計算をご確認下さい
□ この特例を受けた場合の買換資産の取得時期は、実際の取得時期となります。譲渡資産の取得時期を引き継ぎません
□ この特例を受けた場合は、買換資産について特別償却や税額控除、割増償却などの特例を受けることはできません

【2】事業用資産の範囲
□ この特例を受けるためには、譲渡資産および買換資産が事業の用(=農業や製造業、小売業など)に供していることが必要です
□ 事業には、事業的規模ではないものの、相当の対価を得て継続的に行われる不動産の貸付けが含まれます。この場合は、相当の対価を得ているかどうか、および継続的に行われているかどうかについての判断が求められます
□ たな卸資産または雑所得の基因となる土地等や、この特例を受けるためだけの目的で一時的に事業の用に供したと認められる資産、空閑地(=特別の施設を設けていないものを含む)や空き家については、事業用資産に該当しません

【3】特例を受けるための譲渡資産の要件
□ 事業の用に供している土地等または建物等で一定のものを譲渡すること
□ 譲渡資産の譲渡には、収用等、贈与、交換、出資によるものおよび代物弁済としての譲渡は含まれません

【4】特例を受けるための買換資産の要件
□ 譲渡した年の12月31日までに一定の資産を取得すること。なお、所定の届出による例外として、譲渡した年の前年(=先行取得)または譲渡した年の翌年(=取得見込)の取得も対象となります
□ 取得した買換資産を、取得の日から1年以内に事業の用に供するまたは供する見込みであること
□ 買換資産の取得には、贈与、交換または一定の現物分配によるもの、所有権移転外リース取引によるもの、および代物弁済によるものは含まれません
□ 買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、原則として、譲渡した土地等の面積の5倍以内(超える部分は特例の対象となりません)であること

【5】譲渡所得の金額の計算(課税される部分の判定)
(1)譲渡資産の譲渡価額≦買換資産の取得価額の場合(∴基礎価額は譲渡価額)
 ①収入金額・・・譲渡価額×20%(=譲渡価額-譲渡価額×80%)
 ②取得費+譲渡費用・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%
 ③課税される譲渡所得金額・・・①-②
(2)譲渡資産の譲渡価額>買換資産の取得価額の場合(∴基礎価額は買換資産の取得価額)
 ①収入金額・・・譲渡価額-買換資産の取得価額×80%
 ②取得費+譲渡費用・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(①÷譲渡価額)
 ③課税される譲渡所得金額・・・①-②
□ 特定の事業用資産の買換えの場合の課税の特例において、譲渡価額と買換資産の取得価額とを比較して、何れか少ない金額を基礎価額と表現します
□ 上記(1)および(2)から、この特例を適用した場合、最低でも譲渡益の20%は課税されることが分かります
□ 配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定は、譲渡価額ではなく譲渡益のうち課税される部分の金額で判定します

【6】買換資産の取得価額の調整
□ 課税の繰り延べを受けた場合は、必ず買換資産の取得価額を調整しなければなりません。調整後の買換資産に付すべき取得価額は以下のとおりとなります
□ 買換資産に付すべき取得価額=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(基礎価額×80%÷収入金額)+(買換資産の取得価額-基礎価額×80%)

【7】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書に一定の書類を添付して提出することが必要です

【8】計算例
・・・譲渡価額10,000、取得費+譲渡費用3,000、買換資産の取得価額9,000のとき
(1)課税の繰り延べがないとした場合
 ①収入金額・・・10,000
 ②取得費+譲渡費用・・・3,000
 ③課税される譲渡所得金額・・・7,000(=①-②)
 ※買換資産の取得価額9,000は考慮なし

(2)課税の繰り延べがある場合
<譲渡所得の計算>
 ①収入金額・・・2,800(=10,000-9,000×80%)
 ②取得費+譲渡費用・・・840(=3,000×(①÷10,000))
 ③課税される譲渡所得金額・・・1,960(=①-②)
 ※繰り延べられた金額・・・5,040(=7,000-1,960)
<買換資産に付すべき取得価額の計算>
 ※譲渡価額10,000>買換資産の取得価額9,000 ∴基礎価額9,000
 取得価額・・・3,960(=(3,000×(9,000×80%÷10,000))+(9,000-9,000×80%))
 ※取得価額3,960の別法(=9,000-5,040)

固定資産の交換の場合の課税の特例

・・・土地や建物などの固定資産を同一種類の固定資産と交換したときは、従来からその資産を継続して所有していた場合と効果が変わらないことから、譲渡がなかったものとみなされます

【1】概要
□ 交換により手放す資産を交換譲渡資産といい、交換により取得する資産を交換取得資産といいます
□ 交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価が同額の場合を等価交換といい、時価に差がある場合のその差を、交換差金等といいます。なお、交換に伴って相手方から金銭などの交換差金等を受け取ったときは、その交換差金部分について譲渡があったものとして譲渡所得が課税されます
□ 等価交換や交換差金等を交付する場合は、譲渡がなかったものとみなされるため、税金が課税されません
□ この特例を受けた場合の交換取得資産の取得時期は、実際の取得時期によらず、交換譲渡資産の取得時期を引き継ぎます

【2】特例を受けるための適用要件
□ 交換譲渡資産および交換取得資産は、いずれも同一種類の固定資産であること。土地や建物、機械装置などが対象となりますが、たな卸資産である土地等は特例の対象になりません
□ 交換譲渡資産および交換取得資産は、それぞれの所有期間が1年以上であること
□ 交換取得資産は、相手方において交換のために取得したものでないこと
□ 交換取得資産を、譲渡(交換)直前の用途と同一の用途に供すること
□ 交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうち何れか大きい方の時価の20%以内であること

【3】譲渡(交換)直前の用途と同一用途の判定
□ 交換譲渡資産の種類に応じて用途は区分されます
(1)土地・・・宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場または原野、その他の区分
(2)建物・・・居住の用、店舗または事務所の用、工場の用、倉庫の用、その他の区分
(3)機械装置
(4)船舶
(5)鉱業権
□ 例えば、交換譲渡資産が居住用の家屋と敷地で、交換取得資産が店舗用の家屋と敷地の場合、土地については用途が宅地同士のため特例の対象となりますが、家屋については居住の用と店舗の用で用途が異なるため、特例の対象となりません

【4】譲渡所得の金額の計算(課税される部分の判定)
(1)等価交換や交換差金等を交付する場合
・・・譲渡なしとされ、税金は課税されません
(2)交換差金等を取得する場合
・・・交換差金部分について譲渡ありとされ、税金が課税されます。なお、交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうち何れか大きい方の時価の20%以内であることにより、この特例を受けることができます
 ①収入金額(=交換差金等)・・・譲渡資産の時価-取得資産の時価
 ②取得費+譲渡費用・・・(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(①÷(取得資産の時価+①))
 ③課税される譲渡所得金額・・・①-②
□ 課税される部分の金額が、配偶者(特別)控除や扶養控除などを適用する際の合計所得金額(38万円以下、1,000万円以下など)の判定対象となります
□ 交換取引でもこの特例の適用要件を満たさない場合は、原則的な方法により譲渡所得を計算します

【5】取得資産に付すべき取得価額の判定
・・・固定資産の交換特例の適用を受けた場合は、必ず取得資産の取得価額を調整しなければなりません。調整後の取得資産に付すべき取得価額は、以下の(1)~(3)のとおりとなります。なお、交換取引でもこの特例の適用要件を満たさない場合は、以下の(1)~(3)によらず、原則的な方法により取得資産の取得価額を計算します
(1)等価交換の場合
 →(譲渡資産の取得費+譲渡費用)+取得経費
(2)交換差金等を交付する場合
 →(譲渡資産の取得費+譲渡費用)+交換差金等+取得経費
(3)交換差金等を取得する場合
 →(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(取得資産の時価÷(取得資産の時価+交換差金等))+取得経費

【6】適用を受けるための手続き
□ この特例の適用を受けるためには、確定申告書を提出することが必要です
□ 固定資産(土地や建物など)を交換した場合の特例チェックシート・所法58条(東京国税局HP/平成28年分用資産税関係チェックシート)

その他の特例

【1】特定の居住用財産の買換えの特例
□ 居住期間が10年以上で、所有期間が10年超の居住用財産(旧居宅)を売って譲渡益が生じ、代わりの居住用財産(新居宅)を買い換えた場合は、譲渡年の譲渡益に係る課税を将来に繰り延べることができます
□ 課税を将来に繰り延べる特例であり、譲渡益に対する課税が免除されたわけではありません
□ 特定のマイホームを買い換えたときの特例(国税庁HP/タックスアンサー)をご覧下さい

【2】保証債務を履行するために資産を譲渡した場合
□ 他人の債務(保証人、連帯保証人、連帯債務者や抵当権の設定など)を弁済(=履行)するために土地や建物を譲渡したにもかかわらず、弁済した金額の全部または一部について、本来の債務者(=他人)から回収することができない場合(=求償権が行使不能といいます)は、その資産を譲渡したことによる譲渡所得のうち一定の金額をないものとすることができます
□ 友人や知り合いの債務について保証人となっている場合や、法人の借入金について社長が保証人の立場(社長個人名義の不動産につき抵当権を設定している場合を含む)で債務を弁済した場合が考えられます
□ ご自身が資力を喪失して、ご自身の債務を弁済することが著しく困難な場合に資産を譲渡したことによる所得の非課税規定とは異なります
□ 保証債務を履行するために土地建物などを売ったとき(国税庁HP/タックスアンサー)をご覧下さい
□ これに類似するものとして、譲渡代金が貸倒れになった場合などの特例があります

【3】他の軽減税率
(1)土地等を国や地方公共団体に譲渡した場合【課税短期譲渡所得】
□ 課税短期譲渡所得金額に対する所得税(率)は、15%となります
□ 所得税15%のほか、住民税が5%課税されるため、結果、課税短期譲渡所得金額に対しては所得税と住民税の合計で20%の税金が課税されます
(2)土地等を優良住宅地の造成等のために譲渡した場合【課税長期譲渡所得】
<所得税の計算式(税率)>
□ 2,000万円以下・・・課税長期譲渡所得金額×10%
□ 2,000万円超・・・(課税長期譲渡所得金額-2,000万円)×15%+200万円
<住民税の計算式(税率)>
□ 2,000万円以下・・・課税長期譲渡所得金額×4%
□ 2,000万円超・・・(課税長期譲渡所得金額-2,000万円)×5%+80万円

株式等を売ったとき